大統領選の勝利とジャスティン・サンの参入で、トークン販売は一気に加速
当初、バロンの10%の持ち分はそれほど大きな価値を持たなかった。WLFのトークンは購入後に再販も譲渡もできず、販売状況も振るわなかったためだ。しかし、トランプが大統領選に勝利すると状況は一変する。米証券取引委員会(SEC)の捜査を受けていた暗号資産の起業家でビリオネアのジャスティン・サンが、このプロジェクトに7500万ドル(約114億円)を投資すると発表したのだ(おそらく偶然ではないが、トランプ政権下のSECは2月にサンへの捜査を停止した)。
その直後からトークンの販売は急拡大し、8月までにWLFは同社および顧客が公表した数字に基づく推計で、約6億7500万ドル(約1026億円)相当のトークンを販売した。これを受け、税引き後のバロンの取り分はおよそ3800万ドル(約57億8000万円)に上った。
ドル連動のステーブルコインUSD1を発表し、収益源が多様化
WLFはまた3月に、米ドルに連動するステーブルコインの「USD1」を発表した。このコインの時価総額は約26億ドル(約3952億円)に達しており、その裏付けとなる事業の評価額は8億8000万ドル(約1338億円)と見積もられる。トランプ家が保有する関連企業は、このベンチャーの38%を所有しているとみられ、バロンの持ち分は約3400万ドル(約51億7000万円)の価値を持つことになる。
上場企業Alt5との取引により、トークンと株式の交換で資金が還流
WLFは8月、上場ヘルスケア企業のAlt5 Sigma(オルトファイブ・シグマ)と提携契約を結んだ。Alt5 Sigmaは、暗号資産のトレジャリー(財務運用)企業への転換を目指していた。この取引の一環として、同社は7億5000万ドル(約1140億円)相当のWLFトークンと引き換えに、複数の自社証券を交換した。交換されたのは、100万株の自社株、株価が7.5ドル(約1140円)を下回ると無価値になる9900万のワラント(10月2日時点の株価は2.78ドル[約423円])、そして、さらに高い価格で権利行使できる2000万のワラントである。
Alt5はまた、外部から調達した資金の一部を用いて、7億1700万ドル(約1090億円)相当のWLFトークンを購入した。このうち約5億ドル(約760億円)がトランプ家の会社に、税引き後で約4100万ドル(約62億3000万円)がバロンに渡ったと推定されている。
ロック中のトークンの扱い
バロンはさらに、トランプ家の会社が当初受け取った225億枚の10%にあたる推定22億5000万枚のWLFのトークンを受け取っている。このトークンは再販できないため、フォーブスは当初その価値を0ドルと見積もっていた。しかし8月、トークン保有者による投票で、創業者の保有分を除き、全体の20%を市場で取引可能とすることが決まった。残りを解禁するか、またトランプ家や他の投資家の保有分も売買可能にするかどうかについては、今後さらに投票が行われる見通しだ。
市場で流通しているトークンは、現在1枚あたり約20セント(約30円)で売買されているが、バロンや他の創業者が保有している分はロックされており、売却できない状態だ。そのためフォーブスは、それらについて大幅なディスカウントを適用している。こうした条件を踏まえると、バロンの推定10%の持ち分の価値は現在、約4500万ドル(約68億4000万円)と見積もられる。
バロン・トランプの総資産は、現時点で約228億円に到達
これらをすべて合計すると、バロンの資産の総額は、19歳の大学2年生としては決して小さくない金額の1億5000万ドル(約228億円)強に達している。バロンには他に知られている資産はない。この資金があれば、ニューヨーク大学スターン経営大学院の授業料6万7430ドル(約1025万円)を実に2200回以上支払える計算になる。


