オープンファクトリーが示す「コミュニティ資本主義」の夜明け
対談を通じて感じたのは、これが単なるオープンファクトリーという政策を超えた、「コミュニティ資本主義」の実験だということです。地域競争から地域共創へ。競争や効率を至上とする従来の資本主義から脱却し、経済的な豊かさだけでなく、地域に存在する人のつながり、自然、歴史、文化などのさまざまな資本を組み合わせることで、地域ならではの豊かな社会の実現をめざす。オープンファクトリーは、その可能性を示してくれています。

「対等な関係性」の構築
行政と企業、大企業と中小企業といった関係性は、とかく「上下関係」に陥りがちです。しかし、私たちが考えるオープンファクトリーは、その関係性を根本から覆しました。行政は「支援者」ではなくなり、企業は「被支援者」ではなくなりました。互いが「対等なパートナー」として、それぞれの強みを持ち寄り、1つの目標に向かって協力し合う場を形成したのではと考えています。
この「対等な関係性」は、単なるビジネス上の効率性だけでなく、人々の心を動かし、自律的な行動を促す上で不可欠です。私は、この関係性を「シーソーゲーム」に例え、一方に傾くことなく、常にバランスを取り続けることの重要だと感じています。その代表例が八尾市でよく見られます。
八尾市は、13の地域企業とともに、共創で9/16(火)~22(月)まで大阪ヘルスケアパビリオンに出展しました。テーマは「とにかく触る博」。物や人に触れるだけではなく、ワークショップや映像やオンライン工場見学などの様々なコンテンツを通して、心で「八尾」に触れてもらうという体験型のパビリオンです。企業の個を前面に押し出し、売り込む従来の展示会でなく、「博覧会」という公衆の教育を主目的として、人類が達成した進歩や将来の展望を示す催しという意味を問い、八尾という地域の産業を触れてもらう1つのパビリオンを13企業で作り上げました。
オープンファクトリーは、単なる産業政策を超え、地域と企業のあり方、そして私たちの働き方や生き方を再定義する壮大な物語です。それは、効率や競争だけでは測れない、人々の笑顔や信頼、そして「面白さ」といった情緒的な価値が、これからの社会を動かす鍵となることを教えてくれています。



