事態の収拾に奔走するロシア政府
ロシア政府は事態を収拾するため、緊急措置を講じようとしている。コメルサントによると、ロシアのアレクサンドル・ノバク副首相は、中国、韓国、シンガポールからのガソリンの輸入関税を免除し、2016年から禁止されているオクタン価向上剤を一時的に再導入して国内供給を拡大する計画の概要を発表した。
ロシア当局は、これらの措置とベラルーシからの輸入を増やすことで、月間数十万トンのガソリンと軽油が市場に供給されることを期待している。ロシアのベラルーシからのガソリン輸入量は、前年比で既に36%増加している。ノバク副首相は1日、記者会見で、国内のガソリンの供給状況は「制御下にある」と強調した。
ロシア英字紙モスクワ・タイムズによると、ロシア財務省は来年から付加価値税(VAT)を20%から22%に引き上げることを提案しており、これにより年間1兆3000億ルーブル(約2兆3500億円)の税収を見込んでいる。同国では1~7月期の連邦予算赤字が4兆8800億ルーブル(約8兆8400億円)に達し、既に政府の通年の上限を上回っている。
これらの措置は状況を短期的に緩和するかもしれないが、ロシアはより深刻な構造的問題を抱えている。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、制裁や戦争、老朽化した油田の影響でロシアの石油生産量は減少しており、2030年までに埋蔵量の大半は採算が取れなくなる可能性がある。これにより、戦争経済を支える収入源が脅かされる恐れがある。米シンクタンク、ハドソン研究所のルーク・コフィー上級研究員は筆者の取材に対し、ロシアの石油輸出は依然として同国の経済的生命線だと説明した。
ウクライナ軍の無人機攻撃による持続的な圧力が、ロシアを経済的に圧迫している。こうした圧力が戦争を終結させる可能性は低いものの、戦場で成果がほとんど見られないまま、ロシア国内の一般市民は燃料確保に苦労している。この状況下で、同国のウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻を続ける意義があると国民を説得することはますます困難になっている。


