欧州

2025.10.07 10:30

深刻化するロシアの燃料危機 供給不足で廃業するガソリンスタンドも

ウクライナの無人機(ドローン)による攻撃で破壊された同国国境に近いロシア西部ベルゴロト州のガソリンスタンド。2025年6月10日撮影(Emil Leegunov/Anadolu via Getty Images)

ウクライナの無人機(ドローン)による攻撃で破壊された同国国境に近いロシア西部ベルゴロト州のガソリンスタンド。2025年6月10日撮影(Emil Leegunov/Anadolu via Getty Images)

ロシアの燃料危機は深刻化しており、政府はもはや問題の規模を隠し切れなくなっている。ロシア紙イズベスチヤによると、不当な値上げに対し、連邦独占禁止局は全国のガソリンスタンド事業者に警告を出し始めた。年初以降、同国では燃料価格が40~50%上昇し、物価上昇の圧力が国民にのしかかっている。

ガソリン価格の高騰により、同国のガソリンスタンド経営者の多くが廃業の危機に瀕している。露紙コメルサントは9月24日、ガソリンの深刻な供給障害により、ロシアの占領下にあるウクライナ南部クリミア半島のガソリンスタンドの約半数が営業を停止したと報じた。

供給不足で廃業するガソリンスタンドも

ロシア燃料連合は、一部地域では卸売価格が小売価格と同等かそれを上回っており、ガソリンスタンドが赤字に陥っていると警告した。露紙プラウダによると、出荷遅延は最大で2カ月に及んでおり、ロシアのガソリンスタンドの約6割を占める独立系事業者が次々と廃業に追い込まれている。

ロシアの経済学者ウラジスラフ・イノゼムツェフ博士は、ウクライナ軍がロシアの製油所を標的としていることで、同国は過去数年間で最も深刻な燃料危機に陥っていると指摘。5月以降、ロシアでは300件以上の独立系燃料小売業者が廃業を余儀なくされたと推定している。

同国では9月末までに、石油精製能力の約38%に相当する日量約33万8000トンの処理が停止された。操業停止の約7割はウクライナ軍の無人機(ドローン)攻撃が原因だという。あるウクライナ軍将校は米誌アトランティックに対し、ロシアの石油施設を意図的に狙っている理由について、同国は「大規模な人的損失を耐え忍ぶことができるからだ」と答えた。「ロシア人は人命など顧みない。だが、経済的な損失を出せば、苦痛を与えることができる」

ガソリン不足はロシア全土に拡大

英ロイター通信によると、ウクライナ軍の無人機による製油所への攻撃でロシアの燃料不足が深刻化する中、クリミア半島の当局は燃料価格を30日間固定し、給油1回当たり30リットルに制限した。ロシア政府は既にガソリンの輸出を禁止しており、ディーゼル燃料の輸出制限も検討中だ。当局は国民を安心させようと問題がないかのように振る舞っているが、ガソリン不足はニジニーノブゴロトなどの地方都市にも広がっている。

ウクライナ紙ウクラインシカ・プラウダが伝えたところによると、燃料不足はロシア国内20以上の地域に拡大している。露紙モスコフスキー・コムソモレツは1日、ロシア極東ハバロフスク地方で運転手が夜を徹してガソリンスタンドの列に並ぶ様子を報じ、この危機が極東地域の交通基盤と日常生活に混乱をもたらしていると警告した。

ウクライナのアントン・ヘラシチェンコ内務相顧問はX(旧ツイッター)に、ロシアの評論家マクシム・カラシニコフが「状況は悪化している」と認めた動画を投稿した。動画の中で、カラシニコフは「燃料危機は今まさに進行中だ。クーポン、つまり燃料カードを使った配給制に切り替える必要があると主張する人々の声が強まりつつある」と解説した。

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翻訳・編集=安藤清香

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