経営・戦略

2025.10.07 08:00

コロナ禍で最高値を記録したモデルナ、ビオンテックの現在 トランプ政権下で逆風

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さらにビオンテックは、米製薬大手BMS(Bristol Myers Squibb:ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)と、BNT327の商業化に向けて提携した。BMSはこの提携に伴い、15億ドルを前払いで拠出している。新型コロナワクチンに関してファイザーと提携した時と同様に、今回も両社は利益(あるいは損失)を折半することになっており、これによりマイナスのリスクを抑えられるはずだ。

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Leerink Partners(リーリンク・パートナーズ)のバイオテクノロジー部門アナリスト、ダイナ・グレイボッシュは、「投資家たちは、新型コロナウイルス感染症や、その他の呼吸器系疾患に関するワクチンについては、今後はもう考えたくない、と思っているはずだ」と語る。「投資家は、がん治療薬のポートフォリオの方に、大いに注目したいと考えているだろう」

モデルナも、小規模ながん治療薬開発プログラムを抱えているものの、呼吸器疾患のワクチンに注力する傾向がより強い。新型コロナワクチン以外で市場に出回っている製品は、鼻や喉、肺に症状が出るRSウイルスに対するワクチンのみだ。

しかし、このRSウイルスのワクチンと、モデルナのインフルエンザと新型コロナの混合ワクチンはどちらも、FDAとCDCのワクチン承認過程に対する監視強化によって逆風の状況にある。そのため、売り上げは振るわない。2024年5月に承認されて以来、モデルナがRSウイルスのワクチンで得た収益はわずか2700万ドルにとどまっている。

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「RSウイルス(のワクチン)は長きにわたり、完成すればドル箱になるシリーズと考えられてきた。だが現状では、接種に関して非常に限られた推奨しか受けられていない」と、ウィリアム・ブレアのミンターは指摘する。

両社は、新型コロナワクチンへの依存度を下げようとする取り組みを続けているが、両社の命運がトランプ大統領の気まぐれに大きく左右されている状況に変わりはない。

第1期政権時の2020年に、トランプ大統領が新型コロナワクチンの開発・生産・流通を促進する「ワープスピード作戦」を提唱した際には、両社は天にも登る勢いだった。だが今では、両社は、2期目のトランプ大統領が反ワクチン論者を保健福祉長官に任命したことで苦境に陥っている。

ただし、トランプ大統領の世界では、物事は急速に変化し得る。リーリンク・パートナーズのグレイボッシュも「トランプ大統領がにわかに目覚めて、ワープスピード作戦でノーベル賞を獲得しようと思い立ち、ロバート・F・ケネディ・ジュニアを解任すれば、(両社の)株価は確実に上昇に転じるはずだ」と述べている。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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