マーケティング

2025.10.15 13:30

カテゴリーではなく利用シーンが起点。これからの商品開発に大切なこと

大ヒットを記録している商品は、いったいどのような発想で開発されたのか。新しい市場を生み出した商品を事例に探る。マクアケ創業者による好評連載第57回。


ライフスタイルの多様化に伴い、既存の「商品カテゴリー」ではくくりきれないユニークな商品が次々と生まれている。これらの商品は顧客に機能やスペックをアピールするだけでなく、「どんなシーンで使われるか」を軸に開発・訴求されている点が特徴だ。言い換えれば、「カテゴリー」を超え「利用シーン」に焦点を合わせることで、 「新たな市場」を生み出しているのだ。今回は、その代表的な例となる3つの商品を紹介したい。

まず紹介したいのは、家電メーカーcado(カドー)が開発したふとん乾燥機「FOEHN(フェーン)001」だ。従来ふとん乾燥機といえば、梅雨時や冬場にふとんを乾かす季節家電というイメージが強かった。しかしこの商品は、寝る前にふとんを暖めたり、日常的に寝具を清潔に保ったりする「毎日の快眠シーン」に着目して設計されたスティック型のワンタッチふとん乾燥機である。

世界最小クラスのコンパクトさでありながら高風圧・高風速でふとん全体を暖められる点が支持され、新しいモノやサービスを応援購入できるECサイト「Makuake」で1億円以上を先行販売し大反響となった。その後一般販売でも累計5万台以上を売り上げるヒット商品に成長した。乾燥機という従来カテゴリの枠を超え、「毎晩ふかふかのふとんで眠りたい」という日常利用の提案が功を奏したと言えるだろう。

次に取り上げたいのは、岩谷産業のインテリア暖炉「MYDANRO(マイダンロ)」である。岩谷産業といえばカセットコンロなどのガス機器で知られるが、この商品は単なるヒーターやストーブではなく、「本物の炎を安全に室内で楽しむ」というコンセプトで開発されたインテリア用品だ。コンパクトな黒い箱の中で赤い炎が揺らめき、部屋を暖色の光で照らす様子は、まさに小さな暖炉のようで、本物の炎がもたらすリラックス効果や非日常感に注目しており、天板にお香やアロマウォーターを入れれば香りも楽しめる。マンションやアパートでも手軽に「暖炉に炎のともる生活」を味わえる点が支持を集めた商品だ。これも従来ジャンルに収まらない新しい市場創出だ。

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文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

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