これまで北米にはいないと思われていた、巨大な草食恐竜デイノケイルスの化石がモンタナ州で発見された。おもにアジアで多くの化石が発見され、アメリカ大陸ではメキシコでわずか1例が見つかっただけというこの恐竜が、アジアから当時陸続きだったベーリング海を渡って北米へ分布していったことを示唆する非常に重要な発見だ。そしてなんと、この化石が発見されたのはアメリカではなく岡山理科大学の博物館の中だった。
発見されたのは、ダチョウ恐竜とも呼ばれるオルニトミモサウルス類のデイノケイルスと思われる草食恐竜。これまで北米で発見されたオルニトミモサウルス類とくらべて際立って背が高く、顎も頑丈だ。2014年に発見されたデイノケイルスの全身骨格は体長が11メートル。ティラノサウルスにに近い体格を誇る。その化石がアメリカのモンタナ州にある世界有数の恐竜化石の産地「ジュディスリバー層」で発見されたことから、北米にも大型のデイノケイルスが生息してたことが示唆される。
ところで、このデイノケイルスが見つかった場所は、北米ではなく日本の岡山理科大学恐竜学博物館の中。同館が所蔵する別の恐竜コリトサウルスの化石標本に、その下顎の骨が混じっていたのだ。コリトサウルスの研究のためにその全身骨格を調べていた岡山理科大学の高崎竜司助教と千葉謙太郎講師が発見した。
下顎は全長約17センチメートル。歯がない「くちばし」を持つ恐竜だが、北米のオルニトミムス科の恐竜のような鴨のような平たい華奢なくちばしではなく、もっと強力なものだったと推定される。それをCTスキャンしたところ、くちばしの内部に神経や血管が通った網目状の管の存在がわかり、今の鳥類と同じく骨の表面を走る多数の血管によってくちばしに栄養が送られていることが判明した。これは世界で初めての発見だ。
今回の発見を受けて研究グループは、世界でもっとも知られる恐竜化石の産地においても、まだまだ知られていない多様性が隠されていることが示されたと話す。ジュディスリバー層の調査が進めば、「この謎の多い恐竜の正体が突き止められ、当時の北米の恐竜生態系の全体像や、大陸間の恐竜の移動史の解明に貢献することが期待されます」ということだ。



