平沼:僕は今「大人の青春」をさせてもらっていると思っています。自分が打ちのめされたり、相手にされなかったりすると、死ぬほど悔しいんですよ。「日本でデカコーンは前例がない」「ユニコーンすら難しいのに」と批判的なことを言われると、絶対に見返してやりたいと思うんです。「infobox」の今期目標値はARR(年間経常収益)10億円です。セールス&マーケティングSaaSのマーケットは大きく動き出したタイミングで、市場を形成する側のプレイヤーとしてエントリーできている自負がある。あとはやり切るだけです。
山本:この目標設定は、あくまで既存サービスでの連続的な成長ベースの話。これに加えて、非連続の成長に向けた仕込みも進めていますよね。
平沼:BtoBの購買環境のあり方を変える新しいビジネスを構想しています。日本のBtoB営業では、リードを得るために高額な展示会や広告出稿に頼らざるを得ない構造が続いています。これは、個人情報保護法の制約により、ビジネス連絡先の共有が難しいためです。僕たちはこの制約を前提にしながら、これまでにない仕組みで「買いたい企業」と「売りたい企業」をつなぐ新たなチャネルを構想しています。レギュレーションを守りつつ、企業の営業活動を効率化できる、新しい選択肢をつくりたい。まだ詳細は明かせませんが、すでに検証を始めています。
山本:現在の「infobox」は、どの会社がどれぐらい自社の商品に興味があるのか、あるいは誰が意思決定者で、どれほどの予算をもっているのかが見える仕組み。ここからさらにリードに直接連絡が取れるようになると、企業のマーケティング予算も取り込めるので、サービス単価を上げられますし、何よりも日本の営業そのものの変革につながります。X&KSKはデカコーンをつくることが唯一のミッション。ひとつでも成功例をつくることが、業界のモメンタムを変えると信じています。平沼さんを成功事例にして、追随する起業家が生まれていく流れをつくっていきたい。
やまもと・こうへい◎X&KSKマネージング・パートナー。米ゼネラル・エレクトリック、楽天の社長室を経て現職。投資先ソーシングやデューデリジェンス、ファンドレイズからIRなどのオペレーションまでファンド活動を横断的に統括している。
ひらぬま・かいと◎1997年生まれ。中学校卒業後、社会人に。2018年に営業代行会社に入社。同年7月、スマスマ(現インフォボックス)を創業。24年2月に営業データプラットフォーム「infobox」を正式リリース。25年、「Forbes 30 Under 30 Asia」選出。


