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経済・社会

2025.10.06 15:15

制限された板門店への立入り トランプと金正恩の再会に備えた動きか

Yeongsik Im - stock.adobe.com

現時点で可能性が低いとはいえ、面会が実現した時の展開が問題だ。18年6月12日にシンガポールで初めての米朝首脳会談が行われたケースを振り返ると、トランプ氏が首脳会談を決断したのは同年3月8日だった。米国はすでに2月ごろから、韓国で開かれていた平昌冬季五輪の機会を利用し、北朝鮮と情報機関レベルでの接触を本格化させていたが、外交接触は3月末、当時次期国務長官に指名されていたポンペオ中央情報局(CIA)長官が訪朝した時からだった。米朝外交当局は2カ月余にわたり、板門店やシンガポールで接触を続け、米朝首脳共同声明を作り上げた。当時、協議に加わった米政府の元当局者は「米朝間に考えの差がありすぎて、非常に難しい協議だった」と語る。

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だが、複数の外交関係筋によれば、米国と北朝鮮との間で首脳会談に向けた実務接触は始まっていない。トランプ氏の訪韓まで1カ月もない状況で、外交当局間の事前調整が合意に至るのは難しいだろう。普通に考えれば、トランプ氏と金正恩氏が板門店で4度目の出会いを果たしたとしても、単なるあいさつに終わる公算が強い。

それでも、「不安」がぬぐえないのは、第1次と第2次で、トランプ政権の性格がまるで違うことだ。別の米政府元当局者によれば、バイデン前政権当時に300人以上いたホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)メンバーは現在、200人に満たない状況になっている。現在、大統領補佐官(国家安全保障担当)を兼任しているルビオ国務長官の存在感も薄く、外交安保政策はトランプ氏のやりたい放題だという。トランプ氏自身、国務省や国防総省などが協議を重ねたうえで政策的な助言をすることを嫌い、何でも自分が決めたがるという。そうなると、トランプ氏の直感で金正恩氏に対して「(米本土を攻撃できる)大陸間弾道弾(ICBM)さえ放棄すれば、核保有は黙認してやろう」と言い出しかねない。

北朝鮮としては、今年が国防や経済の5カ年計画の最終年にあたる。本来なら年末に朝鮮労働党中央委員会総会やそれに代わる党大会を開き、5カ年計画の「完成」を祝ったのちに、新たな対米方針を発表するのが筋だと考えているはずだ。ただ、トランプ氏が一方的に譲歩してくれるなら、喜んで合意するだろう。そうなれば、日本や韓国を射程に収める短中距離ミサイルの問題は放置され、日韓の安全保障環境は確実に悪化する。

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今回も、トランプ氏は東京でSNSに「金正恩氏よ、板門店で会おう」と投稿し、面会した後に、「ICBM放棄を認めさせた。8番目の平和達成だ」と投稿するかもしれない。4日、新しい自民党総裁に選出された高市早苗氏は、東京で今月下旬、新首相としてトランプ氏と首脳会談を行うことになるだろう。普通なら「まず個人的な信頼関係の構築を」となるが、トランプ氏の暴走を抑えるため、「北朝鮮の核・ミサイル問題で勝手に妥協するな」と言い含めなければならない。高市氏にとって、政権発足早々、かなり荷が重い会談になるかもしれない。

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文=牧野愛博

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