韓国と北朝鮮の軍事境界線を含む板門店。2019年6月、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩総書記が3度目の出会いを果たした場所だ。朝鮮国連軍司令部が、板門店を含む非武装地帯(DMZ)を管理している。2023年7月に起きた米陸軍兵士の北朝鮮への越境事件を契機に、一般客向けの板門店ツアーは中断している。
関係筋によれば、今月31日、外交団向けの板門店ツアーが企画されていた。国連軍司令部も板門店への立入りを許可していた。だが、6日までに同司令部は立入り許可を取り消すと通知してきたという。取り消された理由など詳細は明らかになっていない。
この情報に触れた関係者らが一斉に思い浮かべたのが、31日から11月1日まで韓国南東部の慶州で予定されているアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議のことだ。韓国メディアは、トランプ氏の訪韓は29日で、日帰りになる可能性もあると伝えている。韓国の専門家は「トランプ氏は習近平中国国家主席と会わなければならないし、李在明韓国大統領とも会うだろう。金正恩氏と会う時間はほとんどないのではないか」と語る。同時に、複数の外交関係筋は「トランプ氏の動きは予測がつかない。米朝接触がないとは断言できない」とも話す。
トランプ氏は2019年6月29日朝、主要20カ国・地域(G20)首脳会議で滞在していた大阪から、「韓国に向かう。もし金正恩氏がこれを見ていたなら、DMZで会って、握手して挨拶しよう」とSNSに投稿。翌30日には金正恩氏と板門店で面会した。
トランプ氏は8月の米韓首脳会談の際、金正恩氏と年内にも会いたいと語った。金正恩氏も9月の最高人民会議(国会)での演説で「私はまだ個人的なトランプ現米国大統領に対する良い思い出を持っている」と語った。国連軍司令部としては、19年のように突然、板門店で2人が面会することになった際の混乱を避けるため、とりあえず、トランプ氏が韓国にいる可能性が残るAPEC首脳会議の終了時まで万全の体制を敷くつもりなのだろう。



