フリーアナウンサー有働由美子の「いつまで働く?」をテーマにした連載コラム。50歳を目前にNHKを辞し、新たな道を開拓してきた経験をもとに、仕事との向き合い方や40代以降に迎えるミッドライフクライシス(中年の危機)の乗り越え方、働き方のシフトチェンジなどについて綴る。今回のテーマは「好きを仕事にするのは幻想か」だ。
「就職セミナーで話してください」というような仕事は、なるべく受けないようにしているが(学生さんに影響を与えるのが怖い)、以前、局にいたときに言われて何度か対応したことがある。
その際、必ず訊かれたのが、「好きなことを仕事にするのがやはりいいですか?」という問いと、「自分は何が好きなのかわからず、どういう職種に就いたらいいのかわかりません」というものだった。
だいたいの場合、大前提として「わたしがマスコミの仕事を好き」と想定されていることがこそばゆくも感じるのだけれども、それなりに長年勤めていたら、働いたことのない学生さんはそうも思うよねと思う。
わたしが就活で選んだ3つの理由
では、わたしは「好き」を仕事にしたかと問われたら、「いいえ、“やってみたいこと”をいったん選びました」というのが正直な答えだ。最初に就職する際、わたしが選択した理由としては、次のようなものがあった。
1.小さいころから、読んだ本とか聞いた話を母親に話すのが好きだった
2.小学生の時に、わからないことを『小学生新聞』に問い合わせたら、記者の方が丁寧に教えてくれたことで、記者って人のわからないことを調べて教えてくれるすごいお仕事だ!と感動した
3.1991年に社会人になったわたしの時代は、マスコミが就職ランキングでも上位だった。ゆえに「なんかイケてる職業」という硬軟織り交ぜた理由があり、マスコミを選んだ。内定を頂いた中でNHKを選んだ
じゃあ、「好きな仕事か」と問われたら、そう言えるようになったのは、ごくごく最近のことだ。むしろ、この仕事を選んでから20年くらいは、なんでいつまでたっても下手なのだろう、満足できないのだろう、辛いのだろう、なんか違ったかもしれない、向いてない、もっと合う仕事があったかもしれない、と真剣に思っていた。
でも続けてきたのは、ひとえに、明日やらなきゃイケない仕事があるから辞められなかった、というだけだ。
自分しか知らないと思っていることを人に話すのは好きだが、それと仕事とはまったく違う。仕事でものを伝えるときには、入念な取材を重ね、原稿を書き、その先で意地が悪いほどの緻密なチェックを受け、つくり直し書き直し、もう一度も二度もまた取材して書き、やっと放送に出る。
その過程で自分が当初こう伝えたいと思っていたものとは別物のお堅い表現になっていたり、異なる内容になっていたりして、手応えがあるような無いようなことがほとんどだ。



