それは、マスコミという、マス(多くの人)に伝える時のルール、作法があるから当然のことで、自分の思いと、プロフェッショナルとして世に出すことは必ずしも100%イコールとはならない。
結局仕事ってそういうものではないかと思う。今はSNSの登場で、100%自分の思いを述べられるメディアもあるので、それを実現している人からすると、ちゃんちゃら可笑しく見えるのかもしれないが、やはり作法は違う。
30年以上経って好きな職業に
わたしは、同業者や視聴者の多くの異見にもまれて、自分の考え方ややり方を時にぶちのめされたり、否定されたり、叱咤激励されたり、鍛え上げられたりしてきてもらった。
その長い過程の中でようやくわかったのは、ああ、わたしは何かを言う、伝えるのが好きなのではなくて、調べたり、その過程で自分の考えを見つめたり、変えたり、異見にあったときには自分の思いの強さを確認するためにもっと深く思考したりする、そういう作業が好きなんだということだ。
それがわかるまでに25年以上、いや30年以上たってようやく最近、この仕事好きかも、と思えるようになった。好きな職業だと思えるようになってからは、どんな辛い異見も有り難く、素直に面白がれるようになったし、向いてないかもなんぞというダサい言い訳は一切しなくなった。
仕事柄、インタビューでいろいろなプロフェッショナルの方に話を伺う機会があるけれど、最初から好きを好きなまま仕事にできている人は、ほとんどいない。なんなら好きでもないけど、続けてきたら超一流になった、という方もいる。
そう考えると、本当の意味で好きになれるまでには、仕事の場合は相当時間がかかるのかもしれない。
でもこれは、平成に就職したわたしの意見で、今の時代には、「思い立ったが吉日」のようなフットワークの軽い転職が、もしかしたら天職を見つける手っ取り早い方法なのかもしれない。
だから学生さんに今、「好きを仕事にするは幻想ですか?」と聞かれたら、「やってみなけりゃわからない」と答えるのが誠実だと思っている。
もうひとつ余計なことを言わせてもらえば、好きかどうかを確かめるのではなく、好きになるように自分を変化させていってみるのも1つの手だよね、とも思う。
有働由美子の連載「いつまで働く?」


