欧州

2025.10.09 11:30

ウクライナ発電施設の回復力の鍵は「民主主義」 電力大手CEO

ロシア軍のミサイル攻撃で損傷した火力発電所に立つ、ウクライナの民間電力最大手DTEKのマクシム・チムチェンコ最高経営責任者(CEO)。2024年4月2日撮影(Oksana Parafeniuk/For The Washington Post via Getty Images)

チムチェンコCEOは、ウクライナにとってエネルギー安全保障は最優先課題だと指摘する。「再生可能エネルギー設備を建設すれば、必要なのは太陽や風だけだ。すべてが分散しているため、標的を定めるのは(従来の発電所より)はるかに困難だ。しかも、使用場所の近くに設置できるため、送電中に電力が失われることもない」

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ウクライナでは、意思決定が迅速に行われ、プロセスは透明性が高く、起業家は最小限の官僚的摩擦で革新を起こすことができる。対照的に、ロシアの独裁主義体制は破壊と恐怖が特徴だ。火力発電所から製油所に至るまで、ロシアがウクライナの民間施設を繰り返し標的にしているのは、生活を耐え難いものにし、素朴な人々の精神を打ち砕くためだ。

ウクライナ人が証明しているように、民主主義の強みは、圧力下でも適応できる点にある。チムチェンコCEOは、同国のエネルギー安全保障が保証されていないことを慎重に指摘しつつ、攻撃の激化により、間違いなくシステムが再び試されることになるだろうと述べた。だが、ウクライナが屈服しないことは明らかだ。

これは、DTEKの世界の投資家に対する呼びかけによって裏付けられている。蓄電池システムや風力発電所のような事業は、電力供給を維持するだけでなく、攻撃下にある国の再建に投資家が参加するよう呼びかけるものだ。ウクライナは生き残りを懸けて戦っているにもかかわらず、ビジネスにも門戸を開いているという暗黙のメッセージが込められている。

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ウクライナの成功は、より深い地政学的真実を浮き彫りにしている。すなわち、独裁国家による侵略が自動的に支配へとつながるわけではないという事実だ。ロシアは度重なる軍事的失態をさらし、国際社会における地位は失墜した。北朝鮮の金正恩総書記のような人物との連携は、同意ではなく強制に依存する体制の孤立と評判の低下を象徴している。

衰退するロシア

たとえ従来の意味での軍事的勝利が不確実なままであっても、ロシアは戦場をはるかに超えた形で弱体化している。世界銀行によると、ロシアの国内総生産(GDP)の成長率は、ウクライナ侵攻前の水準より6~10%縮小している。同国では軍事支出が急増しているにもかかわらず、GDP成長率は年間1~2%にとどまっている。

欧州の政策シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)のジェレミー・シャピロ研究部長は米誌アトランティックに、「ロシアの戦時経済はソビエト時代の停滞期の写しのように見える。クレムリン(ロシア大統領府)は運命の戦争を遂行していると主張するが、実際には21世紀から取り残されている」と記している。西側の推計によれば、ロシア軍の死傷者数は100万人規模に上るとみられる。これは将来の戦力に深刻な打撃を与える膨大な数だ。

痛みはウクライナとロシアの双方に及んでいるが、クレムリンは慣れ切っているようだ。チムチェンコCEOは、「ロシア軍は民間施設を攻撃する際にまったく選別しなかった」と指摘。「ロシア軍の目的は、一般市民の生活を悲惨な状態に陥れることだ」とした上で、「われわれはあらゆる手段を講じている。時には不可能と思われることさえも、ロシア軍の成功を阻止するためだ」と述べた。

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翻訳・編集=安藤清香

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