ロシアによる侵攻が続く中、ウクライナは民主主義が単なる理想ではなく、特にエネルギー分野で活用される際には強力な手段であることを示している。ロシア軍が発電所や送電網、住宅街を攻撃する中、ウクライナの発電施設は耐え抜きながら適応を続け、分散型ネットワークへと変貌を遂げた。これにより家庭の明かりは消えず、工場は稼働を続け、国民の士気は保たれている。
ウクライナの回復力は、ロシアの戦術が最終的には軍事的にだけでなく、経済的にも道義的にも失敗することを証明している。独裁政権は破壊によって自らを消耗させるが、民主主義は適応し、より強くなる。
筆者の取材に応じたウクライナの民間電力最大手DTEKのマクシム・チムチェンコ最高経営責任者(CEO)は、「当社は新たなプロジェクトを構築し、可能な限りそれらを守り、発電施設の強靭性を高め、住民を守る。これが、当社がエネルギー戦線と呼ぶものだ」と語った。同CEOは、ウクライナ侵攻での同社の役割は、電力の復旧だけでなく、民主主義そのものを守ることだと強調する。「迅速に回復して成果を出さなければ敗北する。事業を失った後で、国家も失うことになる」
チムチェンコCEOは、自社のバッテリー貯蔵設備や太陽光・風力発電への投資が単なる環境保護に向けた姿勢ではなく、ロシアとのエネルギー戦争における重要な防衛手段であり、国家の不滅の精神の象徴だと述べた。同社のバッテリー貯蔵設備と再生可能エネルギーの導入は、単なる一時的な対処法ではなく、電力系統の安定性を維持するために設計された技術的な防護策だ。DTEKは先月、エネルギー貯蔵製品を手がける米フルエンス製の200メガワット級蓄電池システムを導入した。
ロシア軍はこれまで、ウクライナの電力系統を繰り返し標的にしてきた。無人機(ドローン)やミサイルによる攻撃で、昨年半ばまでに同国の一部の発電所の発電能力の9割近くが破壊された。それでもウクライナは屈しなかった。大規模な再建を経て、昨年の冬までに計画停電はまれになり、電力不足は主に局所的なものとなった。
分散化で回復力を維持
チムチェンコCEOは、ウクライナの回復力は分散化によるものだと説明する。DTEKは、わずか数発の爆弾で容易に破壊される大規模な石炭火力発電所に依存することなく、分散型太陽光発電所や風力発電所、蓄電池システムといった、攻撃されにくく修復しやすいエネルギー設備に投資している。
こうした設備は空爆によるリスクを軽減するため、国内6カ所に分散配置されている。地域の風力や太陽光発電所は数日以内に復旧することができる。従来の火力発電所では数カ月を要する作業だ。



