2. 常に旅をする
旅は心をリフレッシュさせ、視野を広げ、人生の満足度を高めるとして長い間称賛されてきた。行ったことのない場所を訪れたり初めての文化に接することで創造性がかき立てられ、個人の成長が促される。小旅行や地元での休暇でさえ精神的なリセットをもたらしてくれる。そうして人は元気を取り戻して日常に戻ることができる。
旅行異形症
だがSNSは旅行を個人的な体験から人の目を意識したパフォーマンスに変えてしまった。こうした傾向はいま、研究者たちが「旅行異形症」と呼ぶ現象、つまり他人と比べて自分は世界を十分に見ていないと感じるものの一因となっている。これは多くの人が経験する感覚だ。
クルーズ旅行などを催行するScenic Group(シーニック・グループ)の委託を受けて調査会社Talker Research(トーカー・リサーチ)が米国の成人2000人を対象に行った最近の調査によると、米国人の10人に7人近くがこのような感覚を経験しているという。生涯の旅行の回数に満足している人は半数に満たない(48%)。その要因として、かなりの回答者が友人や家族、インフルエンサーのSNSへの投稿を挙げている。Z世代は特に影響を受けていた。47%がインフルエンサーのコンテンツが旅行異形症の一因になっていると回答し、半数以上が人生全体において「遅れをとっている」と感じていた。
調査では、この傾向の背後にある感情面でのプレッシャーも浮き彫りになった。若年層の米国人の4分の1以上が、自分の旅行歴を恥ずかしく思っていることを認めた。旅行に関する願望がすべて叶ったと感じている人はわずか10%だ。
費用や仕事、家庭の責務といったよくある障壁がプレッシャーをさらに大きくしている。これがSNSを通じて他人との比較を強め、特にストレスとなる。こうして旅行は個人的な喜びの源というよりも成功の基準のようになっていく。
旅行が多くても、幸福度が高まるとは限らない
加えて、専門誌『Tourism Management(ツーリズム・マネジメント)』に今年掲載された研究では、旅行が多ければ幸福度が高まるとは限らないことが浮き彫りになっている。研究者らは、旅行の頻度が感情の強さにどのような影響を与えるかを調べた。予備調査と5つの追加分析を通じて、研究者らは逆U字型の関係を発見した。つまり、気持ちの面での満足度は旅行回数が多いほど最初は上昇するが、旅行回数が多くなりすぎると低下し、感情の麻痺につながる。
研究者らはまた、旅行者の専門知識がこの効果を媒介することも発見した。旅行経験の豊富な人は頻繁な旅行をうまく処理し、旅行に神秘さや目新しさを取り入れることで過剰な旅行による無感覚を和らげることができるのだという。
純粋に自分を幸せにしてくれるものを優先
SNSは、誰もが常にどこかに向かっていなければならないように感じさせるかもしれない。だが真のメリットは自分にとって有意義な体験から得られるのであって、訪れた場所の多さやネット上で映える旅の写真から得られるものではない。
旅行に対するアプローチは人それぞれだ。冒険的で駆け足の旅に喜びを感じる人もいれば、心からくつろいで内省できる、静かでゆっくりとした旅に喜びを見出す人もいるだろう。あなたが優先すべきは完璧さや量よりも楽しさやその場に身を置くことであるべきだ。
旅行が最も実りあるものになるのは、純粋に自分を幸せにしてくれるものを優先したときだ。量や完璧さよりも質とマインドフルネスを受け入れることを学ぼう。


