3.『ハウス・オブ・ダイナマイト』(A House of Dynamite, 2025)
キャスリン・ビグローは、しばらく長編から離れていた印象がある。2017年の『デトロイト(Detroit)』は監督作だが、興行成績は振るわず、賞レースでもほとんど存在感を示せなかった。5部門でオスカー候補となった2012年の『ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)』や、作品賞・監督賞を制した2008年の『ハート・ロッカー(The Hurt Locker)』とは対照的だ。
そんな彼女が、注目を集めること必至のNetflix作品で帰ってきた。本作は序盤から容赦がない。『ハウス・オブ・ダイナマイト(A House of Dynamite)』は、謎のミサイルが米国に向けて飛来し、その発射源と報復の是非を政府高官が判断しなければならないという、国家にとって最悪の20分間へ観客を叩き込む。
イドリス・エルバが大統領、レベッカ・ファーガソンが軍の通信担当士官を演じ、ガブリエル・バッソ、ジャレッド・ハリス、グレタ・リー、トレイシー・レッツらのアンサンブルが、道義的かつ存在論的な賭けを孕むプロシージャル・スリラーで時間と戦う。10月の限定劇場公開を経て、10月24日にNetflixで世界配信となる。
4.『We Have Always Lived in the Castle』(2018)日本配信未定
監督が突如としてジャンルを切り替えると、うまくいかないことも多い──だがステイシー・パッソンはそれに頓着しなかったようだ。
感情の振幅が大きく文化的にも示唆に富むデビュー作『コンカッション(Concussion)』や、テレビシリーズ『トランスペアレント(Transparent)』で知られるパッソンは、『We Have Always Lived in the Castle』で違和感なくファンタジー領域に踏み込んだ。シャーリイ・ジャクスンの同名小説を原作とするこの寒気を誘う物語は、家族の悲劇の後、病身の伯父とともに隠遁生活を送る2人の引きこもりの姉妹であるメリキャット(タイッサ・ファーミガ)とコンスタンス(アレクサンドラ・ダダリオ)を描く。
やがて策を弄する従兄のチャールズ(セバスチャン・スタン)が現れ、彼は彼女たちの脆い均衡を脅かし、埋もれていた秘密を露わにする。批評家の評価は得たが大衆にはほぼ見逃されたこの小粒のホラーは、Netflixで観ることができる。心理的な底流と曖昧な現実感をたたえたゴシック・サスペンスに寄り添う一作であり、この季節にホラーの道を行く人には、家の内側に潜む不気味さを想起させる、雰囲気重視の人物劇だ。


