ボットの声 VS 人間の声
ボットとの会話を好む人は、ほとんどいないだろう。筆者自身も相手がボットだと分かるや否や、人間の担当者に繋いでもらうために「0」を何度も押している。スラングAIも、人間の方がボットよりも適している場面があることを認識している。
「駐車場の可否、アレルギーや特別な要望に関する問い合わせなど、AIエージェントでは対応が難しい場合もある。我々はゲストに選択肢を提供すべきだと考えており、AIではなく人間と直接やり取りしたい場合にはそれを可能にしている」と、サンブヴァニは述べた。
しかし、人々の意識は変化しつつある。多くの人が、かつてはオンラインでの給与管理や屋外モールのスターバックス、さらにはタクシーの代わりに見知らぬ人の車に乗ることに違和感を抱いたものの、やがて慣れていったのと同じように、現実を受け入れるようになるだろう。将来的にはスラングAIのような音声対応AIシステムがあらゆる企業に導入され、私たちは常にボットと会話することになる。優れたプラットフォームは、まずAIエージェントが応答していることを明示し、必要に応じて人間オペレーターに転送する選択肢も提供するだろう。
「1年前には、顧客の約33%がすぐにAIを避けようとしていたが、現在では22~25%まで低下している。それでも、顧客にAIエージェントと会話していることを明確に伝えることを重視している」と、サンブヴァニは語る。
AI音声プラットフォームが生産性と収益を最大化
多くの人は、AIによって仕事が奪われるのではないかと懸念している。ソフトウェア開発やカスタマーサービスといった領域ではそうかもしれない。だが、レストラン業界については当てはまらないとサンブヴァニは主張する。
「米国のレストランのほぼ全てが、人手不足に直面している。そのため、当社のソリューションを導入すれば、既存のスタッフの負担を軽減できる」と彼は語る。
14店舗のレストランチェーンと2つのホテルを展開し、1500人以上を雇用するFearless Restaurantsの事業開発部長、シドニー・グリムズも同じ考えを示している。彼女がスラングAIを導入した目的は、従業員を代替するためではなく、生産性と収益を最大化するためだという。
「人員削減が目的ではない。受付係を排除するわけにはいかない。我々の狙いは、顧客に迅速に回答を提供することだ。ある店舗では一週間に250件以上の電話が同時に寄せられたことがあり、スラングAIがなければ約1000件の顧客を失っていた」と彼女は語る。
グリムズによれば、このプラットフォームは24時間365日稼働可能で、電話対応にかかる時間を大幅に削減できるほか、顧客はいつでも必要な情報を得られるという。
スラングAIのコストは決して安くない。グリムズは、1店舗あたり月額およそ450ドル(約6万7800円)を支払っており、小規模事業者には負担が大きいかもしれない。しかし、彼女は顧客サービスの質向上というメリットがコストを上回ると考えている。
「受付スタッフには、電話対応に追われるのではなく、来店客としっかり対話してほしい。私自身が客として入店した際、受付が電話中だと不快に感じることがあるからだ。重要なのは、単に客の質問に答えることではない。複数の電話に対応することで顧客を逃してしまうリスクがあり、機会損失につながる」と彼女は語る。
音声対応AIは、レストラン業界において投資に見合う成果を上げている。近い将来、この種の技術が中小企業にも利益をもたらす事例は、さらに増えていくだろう。


