欧州

2025.10.06 11:00

ハリウッド映画が再びロシア人の心をつかむ日は来るのか?

Getty Images

皮肉なことに、ハリウッドの撤退がこの状況を補完する結果となった。米国の映画会社がロシア市場から軒並み撤退したことで、ロシア政府が支援する制作会社や国家の検閲機関が映画館を占領するようになった。言い換えれば、西側の大作映画が不在であることは、ロシアのウラジーミル・プーチン政権を弱体化させるどころか、クレムリンが文化空間を独占し、それを西側に対する武器として利用することを許すことにつながるのだ。

advertisement

これを許すわけにはいかない。東西冷戦の数十年間にわたり、西側のポップカルチャーは「鉄のカーテン」の向こう側で重要な役割を果たしてきた。ソビエト連邦の国内では公式には禁止されていたものの、西側の映画や音楽、テレビ番組は禁制品として広く流通し、圧制への抵抗や西洋の道徳的優位性といったテーマが強調された。ソ連の抑圧された人々に西側の社会を垣間見せることで、共産主義体制下の生活が唯一の選択肢ではないことを示したのだ。

西側の作品の影響は計り知れないほど大きかった。1978年の回顧録『城を築く:反体制派としての私の人生』で、ソ連の反体制派ウラジーミル・ブコフスキーは、こうした西側の資料が共産主義反対派の士気を維持し、ソビエトのイデオロギーの破綻を暴く上でいかに重要であったかを詳述した。

ロシア人が再び米国のメディアに触れる機会があれば、今日でも同じ現象を起こすのは可能だ。とはいえ、今ではそれが難しくなっている。ハリウッドは依然として大ヒット映画で世界市場を支配しているが、純粋な制作量という点では、露骨な政治的意図を持つ勢力に追い抜かれつつある。かつて世界で公開される映画の4分の1を制作していた米国は、今や10分の1にも満たない。ハリウッド映画の市場占有率が縮小することで、ロシアをはじめとする独裁国家は映画を通じて自らのソフトパワーを投影する機会を得ている。

advertisement

しかし、ハリウッドは依然として世界的に圧倒的な影響力を維持し続けており、ロシア社会に対する影響も例外ではない。ロシア政府はハリウッド映画がロシア市場に再参入するのを阻止しようとするかもしれない。だが、国内経済が低迷し、エリート層の国内政治への不満がくすぶっていることを踏まえると、プーチン政権は慎重な対応を取る可能性が高い。これを踏まえると、ハリウッド映画は再びロシア市場で存在感を示すことになるものと考えられる。また、これはロシア政府にとって最も重要な聴衆である国民に、政府が好む物語に異議を唱える機会を与えることにもなるだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事