人工知能(AI)は存亡の危機に直面している。強力なAIモデルは、学習に用いるデータの質に左右される。しかし、インターネット上の公開データをくまなく収集し、優秀な人材にデータのラベル付けや注釈付けを依頼し、さらに膨大な合成データを生み出しても、最先端の研究所はモデル性能を一段と高めるためのデータをなお確保しきれていない。では、次の大きなAIの前進に必要なデータはどこから来るのか、という問いが残る。
スタンフォード大学の元博士課程学生、シャロン・リーとファンユン・サンは、新しく創業されたMoonlake AIでこの問いに答えようとしている。2人は、視覚的なシミュレーション環境や「インタラクティブな3D世界」を迅速に作成できるAIソフトウェアを開発中であり、これを、複数のステップを踏んで複雑な問題を解く推論モデルのためのデータ生成の基盤に据えようとしている。共同創業者のサン(かつてエヌビディアで、ロボットの学習と評価のための仮想世界構築に従事した研究者)は、このツールがゲーム、アニメーション、映画制作、さらには教育向けに3D世界を作るために人々に自然に使われ、その過程で、より高度なモデルを訓練するためのデータが生み出されるという構想を語った。
「今、データが非常に不足していることはわかっています」とリーは言う。「そして、私たちは、大規模なインタラクティブ世界こそが、データを無限にスケールさせる次のパラダイムだと信じています」。
本日ステルスを脱したMoonlake AIは、AIX Ventures、NVIDIA Ventures、Threshold Venturesから2800万ドル(約41億3000万円)のシード資金を調達した。リーによれば、Moonlake AIのプログラムはロボティクスのような分野のAI研究者にも利用でき、デジタルシミュレーションを作成してタスクが正しく完了したかどうかを検証できるという。「例えば、私たちが作る環境のキッチンでロボットがブレンダー(ミキサー)に触れ、固体が液体になって果汁が攪拌されたことを確認できれば、そのタスクは成功だと判断できます」と彼女は述べた。
Moonlake AIは、AIを用いて3D世界を生成する唯一の企業ではない。AIのゴッドマザーとして知られ、リーのメンターでもある著名なスタンフォード大学教員のフェイフェイ・リーが共同創業したWorld Labsも、空間知能とインタラクティブな仮想世界の創出に取り組んでいる。8月には、動画生成スタートアップのRunwayが、誰もがインタラクティブなゲームを作れるようにする「Game Worlds」を立ち上げた。
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