ロシア国営のタス通信は、ロシア軍がこのほど、前線から数百km後方に制御拠点を置くドローン(無人機)部隊を編成したと報じた。AI(人工知能)技術を用いて安全な距離からドローンを遠隔運用するという。
ドローン操縦士は現在、ドローン攻撃や砲撃の主要な目標にされている。ウクライナは最近、戦果に応じて新しい装備を獲得できる通称「e-points」制度の評価基準を変更し、ドローン操縦士を戦車よりも高価値の目標に位置づけた。
ロシアが開発した新しい技術では、操縦士はもはや敵が攻撃できるほど戦場に近づく必要がなくなり、“ワーク・フロム・ホーム(本国・本拠地からの勤務)”も可能になるとみられる。
ドローンの遠隔制御と変わる操縦士の役割
タスによると、新たな後方指揮拠点は偵察任務と攻撃任務の両方を担い、「ソマリ大隊」(「ドネツク人民共和国」を名乗る組織の志願兵部隊)と第24独立自動車化狙撃旅団の部隊が基盤となっている。この取り組みはウラジーミル・プーチン大統領の与党「統一ロシア」から直接支援されており、ハイレベルの政治的後押しがあることが示唆される。
中核となる技術は、ロシアの独立非営利団体「無人システム・技術センター(CBST、英語表記の頭字語ではCUST)」によって開発された「オルビータ」と呼ばれるシステムだ。2024年に設立されたCBSTはFPV(一人称視点)ドローンの「スクバリエツ(ホシムクドリ)」やジャマー(電波妨害装置)といった技術を通じて、「特別軍事作戦」(ウクライナ侵略のロシアでの呼び名)に参加する部隊を支援してきた。
CBSTのアンドレイ・ベズルコフ理事長は2024年のインタビューで、CBSTは200社を超えるスタートアップを結集しており、たとえば通信機器などのハードウェアやソフトウェアの各メーカーが連携して完成品を迅速に供給できるように、生産の調整にあたっていると説明している。機敏に行動するこうしたテック産業的な姿勢はロシアの官僚的な防衛産業と異質であり、非常に危険な光ファイバードローン「ノブゴロドのバンダル王子(KVN)」をはじめ、ドローン開発で顕著な成果をあげてきた。
CBSTが新たに開発したシステムも同様に重要なものである可能性があり、ロシア軍によるドローンの運用方法を変えていくかもしれない。



