漫才を“翻訳”した、超短納期の舞台裏
通常、ドローンショーの準備には最低2カ月を要するという佐々木。しかし、レッドクリフが正式に依頼を受けたのは、本番のわずか3週間前。
佐々木「急ピッチでした。航空法の申請がギリギリでした(笑)」
ケムリ「じゃあ、本当に、法律で無理になるギリギリのラインだったんですね」
くるま「破ったことない法律を破ることになるところだった(笑)」

さらに制作陣を悩ませたのが、くるまから提出されたプロットだった。
くるま「僕らの曖昧なプロットで『こんな感じです』みたいな。『ボケました』『何かコメントが挟まるので、ここで何かこういうのを出してもらえたら』、みたいな。虫食い状態(笑)」
お笑い特有の「間」や「ニュアンス」というアナログな価値を、500機のドローンが寸分の狂いもなく動くデジタルプログラムにどう「翻訳」するのか。この難題に、レッドクリフのアニメーションチームが応えた。くるまの曖昧なイメージは、即座に絵コンテとなって具体化されていく。その過程で、技術者の“遊び心”が思わぬ化学反応を生んだ。
くるま「僕の顔の絵でお願いしたら、『あの、ちょっとパカパカさせてみました』って。口が動くようになっていて。パカパカが面白いから、『あ、なんか言ってるな』『うす』っていうボケが生まれたんです」

テクノロジーからの提案が、新たな笑いを生む。この相互作用に応えるように、くるまもまた、ドローンという新たな表現形式への最適化を試みていた。
くるま「一言ずつセリフを出すと、ドローンが移動する時間が生まれちゃう。だから、テレビのテロップみたいに、なるべく短い言葉で、キュッとまとめるテクニックが必要でした。4文字とかだから、漢字も使えない。歌詞を考えるみたいな感覚でした」
綱渡りの本番当日。「QRコードの完成を1時間前まで待っていた」

クリエイティブの課題を乗り越えても、本番にはいくつもの壁が待ち受けていた。当日は台風が接近し、ドローン飛行の可否を分ける風速との睨み合いが続いた。
佐々木「(風は)地上で5メートル、上空10メートル(が上限)。今日は強めでした。明日以降だったら本当に風が強くて、(今日で)ちょうどよかったかもしれないです」
さらに、ショーのクライマックスで披露するチケット購入サイトのQRコードが、本番直前まで完成しないという緊急事態も発生していた。
くるま「QRコードの方に関しては、こちら側のチームが、本当に直前まで『サマーウォーズ』ぐらい作業してた(笑)。『いっけー!』ってボタン押して。ギリギリ間に合ったんです」
佐々木「本番1時間前くらいまで、完成待ちしてたみたいですね。ギリギリだった」
くるま「ヒリヒリする~。知らんかった、そんなヒリヒリしてたなんて」

無数の困難を乗り越え、500機のドローンは無事に夜空へと飛び立った。YouTube生配信の同時視聴者は5万人超え。光のショーは、絶大なインパクトを残した。
この大胆な投資の裏には、ドローンショーが持つ唯一無二の広告価値への確信があった。佐々木によれば、今回のショーは「新宿くらいから見えていた」という。
ケムリ「『なんだあれ?』で(QRコードを)読み込んだ人も絶対いますよね」
くるま「新宿の歌舞伎町のホストが、先輩に怒られて路地裏でぐでっとしてたら、夜空にQRコードが浮かんでて、思わず(スマホで)読み込んで……。俺たちのライブに来てほしいですよね(笑)」
前代未聞の挑戦を終え、佐々木はこのタッグの可能性をこう語る。
佐々木「今は日本での活動が中心ですが、来年以降、世界に出ていきたい。世界中でレッドクリフのドローンショーをやっていきたいなと思っています」
その言葉に、くるまも乗っかる。
くるま「ということは、大きいケムリ先生が世界中に?」
ケムリ「なんでだよ!」



