100年後の天気予報が示す──これからのビジネスの新常識

2025年を節目に、さらに加速する世界的な潮流「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」。Forbes JAPAN12月号別冊NEXT GX STREAM 日本発「GX経済圏」の衝撃では、GXの最前線で活躍するプレーヤーに光をあて、日本がGXをリードするための道筋をお届けする。

音楽プロデューサー・小林武史とアスエネ創業者・西和田浩平の気候変動勉強会や、GXに本気で取り組む日本企業のGX RANKING、次世代のスタートアップを選出したNEXT GX STARTUPS 50など、GXの現在地がわかるような様々なコンテンツを特集する。

気象情報大手のウェザーニューズが配信する『100年天気予報』が示すのは、気候変動がもたらす具体的な未来像だ。猛暑、豪雨、水不足──。天気予報から未来を見つめる。


私たちの暮らしはどう変わる? 『100年天気予報』に見る未来

近年、テレビの報道番組のトップニュースとして気象関連の話題が多く見られるようになった。特に夏場は、猛暑、集中豪雨、台風といった気象ニュースが連日トップを飾る。にもかかわらず、「気候変動」や「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」という言葉が出た途端、一般の関心は急激に薄れてしまう。

この矛盾に着目し、新たなアプローチで気候変動を伝える取り組みを始めたのが、世界最大級の民間気象情報会社であり、天気予報や防災情報を提供するウェザーニューズだ。同社が2025年4月から配信しているYouTube番組『100年天気予報』は、気候変動が私たちの暮らしに与える具体的な影響を、身近なテーマからひもとく革新的な番組として注目を集めている。

「以前は専門家をお呼びして話を聞く気候変動の番組をつくっていたんです。しかし、私たちがサポーターと呼ばせていただいている視聴者の皆さんからは共感を得ることができませんでした」

そう振り返るのは、同社クリエイティブディレクターの村田泰謁だ。

「専門家の皆さんが話している内容自体は100%正しいけれど、視聴者と同じ目線、暮らしに接点のあるテーマを扱わなければ、なかなか自身に関係することとして認識してもらえない。いかに受け取っていただく皆さんに自分事化してもらえる内容にするか──一人ひとりが意識していかなければならないテーマだからこそ、『共感を得る』ことが重要だと気づきました」(村田)

この経験を踏まえ、気象予報士の吉良真由子からの提案で立ち上がったのが『100年天気予報』だ。

「大学で気候変動を学んだのちにウェザーニューズに入社したのですが、toB部門で企業向けの気象リスク分析を行うなかで、気候変動によるビジネスへの影響の大きさを日々実感するようになりました。しかし、企業の活動もその先にある私たちの生活もすべてがつながっているはずなのに、どこか分断されてしまっている感覚を、どうにか解消したいという思いを募らせていたんです」(吉良)

番組では、世界中の研究機関のシミュレーションデータを基に、具体的な未来像を提示している。例えば温暖化が4℃進行した場合、「8月の最高気温の月平均値が34.3℃を記録した23年の猛暑ですら、『むしろ涼しい夏』という位置づけになる可能性があります」といった衝撃的な予測だ。

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text by Michi Sugawara | photographs by Yoshinobu Bito | edited by Miki Chigira

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