「持って生まれた才能」と「努力」はどちらがより大きく影響するのだろうか?
研究者たちによると、真に一流のスキルを獲得するための「魔法の数字」は、1万時間だという。
ジャーナリスト兼作家のマルコム・グラッドウェル氏の著書『Outliers 思考と思考がつながる』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。
一流になるための練習時間
成功とは、才能と準備の組み合わせだ。しかし、この考え方にも問題はある。心理学者がギフテッドと呼ばれる人たちのキャリアを詳細に観察したところ、持って生まれた才能の役割は思ったよりも小さく、準備の役割が思ったよりも大きいという結果になったからだ。
まず1つ目の証拠を提示しよう。1990年代の初めに、心理学者のK・アンダース・エリクソンと2人の同僚が、エリートの集まりであるベルリンの音楽アカデミーを対象に研究を行った。アカデミーの教授の助けも借り、バイオリンを学ぶ学生を3つのグループに分けた。
第一のグループはスター集団だ。世界クラスのソリストになる資質を持った学生が集められている。第二のグループは「良」の評価でしかない学生たち。加えて第三のグループは、プロの演奏家になれる望みはほぼなく、将来は公立学校の音楽教師になろうと考えているような学生たちだ。
そして、参加したすべての学生が同じ質問に答えた──初めてバイオリンに触れてから現在までの間で、あなたは何時間練習しましたか?
バイオリンを始めた時期は、どのグループも5歳前後とだいたい同じだった。最初の数年間の練習時間もだいたい同じで、週に2時間から3時間。しかし、8歳前後になると違いが顕著になってくる。クラスでトップになるような学生は、このころから他の誰よりも練習するようになるのだ。



