教育

2025.10.10 10:15

モーツァルトも神童ではなかった 成功に必須の練習量とは

Getty Images

この10年という数字は何を意味するのだろう? 答えは、真剣な訓練を1万時間行うのに必要な、だいたいの長さだということ。つまり1万時間とは、一流になるための魔法の数字なのだ。

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チェコとカナダのスポーツの話を思い出してみよう。それぞれの代表チームでまことに不思議なのは、9月1日以降に生まれた選手がほとんどいないという点だ。一見したところ、この現象は不可解極まりない。チェコには、一年の終わりのほうに生まれたアイスホッケーやサッカーの神童もそれなりに存在するはずであり、その才能をもってすれば、10代の後半までにはトップに登り詰めるはずだ。生まれた月は関係ない。

遅く生まれると損をする

しかし、エリクソンをはじめ、才能第一主義に異を唱える人たちによると、この現象は驚きでも何でもない。遅く生まれた神童は、8歳の時点でオールスターチームのメンバーに選ばれない。なぜなら、体格が小さすぎるからだ。

その結果、彼らは選ばれた子たちよりも練習量が少なくなる。練習量が少ないと、プロのスカウトの対象になる年齢までに、1万時間の練習を積み重ねることができない。そして1万時間という蓄積がなければ、プロの選手に必要なスキルを身につけることも不可能だ。

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モーツァルト、あの史上最高の音楽の神童でさえ、1万時間に到達するまでは本領を発揮することができなかった。練習とは、すでに優秀な人がするものではない。これから優秀になるためにするものなのだ。

1万時間の法則でもうひとつ興味深いのは、言うまでもないことだが、1万時間というのは膨大な時間だという点だ。まだ若いうちにこの練習時間に到達するのは、独力ではほぼ不可能だろう。

まずは、あなたに練習を促し、サポートしてくれる両親の存在が欠かせない。

貧乏でもダメだ。生活のためにアルバイトをしなければならない状況で、十分な練習時間を確保することはできない。

実際のところ、ここまでの練習量を実現するには、たとえばアイスホッケーのオールスターチームのような特別なプログラムに入るか、あるいはそれだけの練習量が可能になるような、めったにない幸運に恵まれる必要があるだろう。

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文=マルコム・グラッドウェル/ジャーナリスト兼作家、訳=桜田直美

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