教育

2025.10.10 10:15

モーツァルトも神童ではなかった 成功に必須の練習量とは

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9歳になるまでに週に6時間、12歳になるまでに週に8時間、14歳になるまでに週に16時間とどんどん増えていき、そして20歳になると、練習時間は週に30時間を優に超えている。ここでは「練習」を、「上達することを目的に、その楽器を演奏することに意図的に専念する」と定義している。

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実際、20歳になるころには、トップの学生の練習時間は累積で1万時間になっていた。その一方で、単なる「良」の学生の練習時間は累積で8000時間、未来の音楽教師はたったの4000時間あまりだった。

エリクソンと同僚たちは、今度はアマチュアのピアニストとプロのピアニストの比較を行った。ここでも同じパターンが出現した。アマチュアの場合、子ども時代の練習時間が週に約3時間を超えることは絶対になく、20歳になるころの累積の練習時間は2000時間だ。一方でプロはというと、年を追うごとに練習時間が着実に増えていく。そして20歳になったときの累積の練習時間は、バイオリニストと同じ1万時間だ。

エリクソンの研究で特に注目に値するのは、エリクソンも同僚も、いわゆる「ナチュラル」(天性の才能の持ち主)を発見できなかったということだ。練習時間はライバルよりもはるかに少ないのに、楽々とトップに躍り出るような音楽家はいなかった。その一方で、他の誰よりも練習しているのにトップクラスになれないような「ガリ勉」タイプも見つからなかった。

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彼らの研究からわかるのは、トップクラスの音楽学校に入れるような能力があるなら、そこから先の道を分けるのは練習量だということだ。そう、単純な話だ。それに加えて、トップに立てる人は、練習量が他の人よりもただ多いのではなく、かなり多いのでもない。比較にならないほどはるかに多いのだ。

1万時間の法則

卓越した技術で複雑なタスクをマスターするには、絶対にこなさなければならない、必要最低限の練習量がある──これは、専門スキルに関する研究をするたびに浮上する考え方だ。実際、研究者たちは、真に一流のスキルを獲得するための「魔法の数字」が存在すると信じている。それは、1万時間だ。

「そのような研究から浮かび上がるのは、世界クラスの専門家と呼ばれるレベルのスキルを身につけるには、1万時間の練習が必要だという結論だ。この結論はあらゆる分野にあてはまる」と、神経科学者のダニエル・レヴィティンは書いている。

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文=マルコム・グラッドウェル/ジャーナリスト兼作家、訳=桜田直美

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