『文明崩壊』出版から20年──著者が自ら読み解くGXの課題と未来

2025年を節目に、さらに加速する世界的な潮流「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」。Forbes JAPAN12月号別冊NEXT GX STREAM 日本発「GX経済圏」の衝撃では、GXの最前線で活躍するプレーヤーに光をあて、日本がGXをリードするための道筋をお届けする。

音楽プロデューサー・小林武史とアスエネ創業者・西和田浩平の気候変動勉強会や、GXに本気で取り組む日本企業のGX RANKING、次世代のスタートアップを選出したNEXT GX STARTUPS 50など、GXの現在地がわかるような様々なコンテンツを特集する。

気候変動や資源問題といった「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」の課題を取り上げた名著『文明崩壊』。20年たった今、社会はどのように変わったのか。自らを「慎重な楽観主義者」と呼ぶ著者が、課題と未来を読み解いた。


2005年に刊行され、現代社会への警鐘として読み継がれる名著『文明崩壊』。その著者である、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のジャレド・ダイアモンド教授は、自らを「慎重な楽観主義者」と称する。過去の文明が崩壊に至った要因を分析したフレームワークは、20年近くたった今、奇しくも現実味を帯びて私たちの目の前にある。

気候変動、資源問題、グローバル・サプライチェーンの脆弱性といった課題が山積する現代において、私たちはどうすれば持続可能な未来を築くための変革、すなわち「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」を成し遂げることができるのか。歴史から学び、未来を見据える知の巨人に話を聞いた。

──2005年の著書『文明崩壊』で提唱した、社会が崩壊する5つの要因のフレームワークは、非常に今日的です。当時よりも危険性が増していると感じる要因はありますか?

ジャレド・ダイアモンド(以下、ダイアモンド『文明崩壊』で、私は過去の社会が崩壊した主な要因を5つ挙げました。そのうち2つは、今日のほうが確実に深刻化しており、より脅威となっています。

その一つが気候変動です。昔も気候変動はありましたが、それは自然現象でした。例えば、アメリカ南西部のアナサジ社会や古典期マヤ文明はかんばつによって崩壊しました。しかし今日私たちが懸念しているのは、人間が引き起こした気候変動です。過去の気候変動が局所的だったのに対し、現代のものは私たち自身が原因であり、その規模も地球全体に及んでいるのです。

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text by Yosuke Iseki | illustrations by Gerhard Van Wyk | edited by Yuko Mori

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