『文明崩壊』出版から20年──著者が自ら読み解くGXの課題と未来

世界全体が一緒に崩壊してしまうリスク

──『文明崩壊』では、5つの要因の一つとして「友好な貿易相手国」との関係を論じています。現代の世界は複雑に結びつき、世界的なサプライチェーンは私たちの生活に影響を与えています。このグローバル・ネットワークは、私たちをよりレジリエント(強靭)にするのでしょうか、それとも脆弱にするのでしょうか?

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ダイアモンド:その両方です。「グローバリゼーション」は、私たちにレジリエンス(回復力)をもたらしもすれば、脆弱にもします。

グローバリゼーションは、輸入を可能にすることで地域的な崩壊のリスクを減少させます。日本は森林をとてもよく管理していますが、一方で木材のほとんどを輸入に頼っています。そして、石油はほぼ全量、海産物の多くも輸入に頼っています。アメリカもまた、農業や建設業の労働力を移民に大きく依存しています。日本やアメリカ、シンガポールのような国々は、グローバリゼーションから大きな利益を得ているのです。

しかし過去には、貿易の断絶によって苦しんだ社会がありました。例えば、グリーンランドに入植したヴァイキングは、鉄をノルウェーからの輸入に頼っていましたが、北極海の寒冷化で航路が途絶えると鉄を入手することができなくなり、やがて全滅してしまいました。

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グローバリゼーションは私たちに利益をもたらす一方で、大きな不利益ももたらします。人類史上初めて、私たちは「世界規模の崩壊」というリスクに直面しているのです。過去には、イースター島やマヤ文明のように、社会は一つずつ崩壊していきました。ただし、クメール帝国(アンコール王朝)が崩壊しても、日本には何の影響もなかったのです。しかし今日では、世界中のあらゆる社会が瞬時に情報を共有し、互いに依存しています。

私たちが今日直面しているのは、気候変動や核戦争によって、世界全体が一度に崩壊してしまうリスクです。だから質問への答えは、「その両方」なのです。グローバリゼーションは、社会が物を輸入できるようにすることで私たちを守りますが、同時に、世界中が連鎖的に崩壊するというリスクを生み出すことで、私たちを危険に晒してもいるのです。

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text by Yosuke Iseki | illustrations by Gerhard Van Wyk | edited by Yuko Mori

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