クロストレプレナーアワード 過去受賞プロジェクトは、米国展開に着手するものや新製品開発に取り組むものなど、新たな展開へと歩みを進めている。
Forbes JAPANが開催しているクロストレプレナーアワードは今年で3度目を迎えた。2023年と24年にアワードを受賞したプロジェクトは進展しているのか。編集部ではアンケート調査を行い、その後を追った。また、24年からは編集部による一次審査と審査員による本審査を実施しており、一次審査を通過したものをノミネートプロジェクトとして選出している。
心・血管修復パッチ「シンフォリウム」の共同開発
グランプリ|受賞年:2024年
▷大阪医科薬科大学、福井経編興業、帝人、帝人メディカルテクノロジー
先天性心疾患手術の課題である再治療介入のリスクを低減する画期的な心・血管修復パッチを実用化。患者や家族の負担を減らし、再治療にかかる医療費軽減も期待される。
2024年6月に発売後、日本全国の医療機関で170名を超える患者に使用されており(25年7月現在)、学会の協力を得ながら現在も使用症例は増加。世界で苦しむ患者に届けるべく海外展開にも着手し、米国規制当局FDAとすでに複数回協議を実施して米国販売に向けて活動している。本品開発で培った自己組織化技術やノウハウをほかの手術用医療材料にも応用すべく、次の新製品開発および心・血管領域以外への適用拡大に着手。
「沿線まるごとホテル」プロジェクト
地域活性/モビリティ部門|受賞年:2024年
▷東日本旅客鉄道、さとゆめ
共同出資会社を設立し、沿線全体を楽しめるホテル的サービスを展開。無人駅等をホテルフロントやロビー、沿線の空き家を客室に改修し、電動トゥクトゥクも配備。
JR青梅線の限界集落の空き家を改修し、先行開業したレストラン・サウナは10カ月間で約5000人が来訪・利用。受賞後1年で20回ほどの地域と連携した沿線まるごとツーリズムを実施。2025年5月25日に沿線まるごとホテル「Satologue」宿泊棟を開業し予約客数なども順調に推移。新たに「Satologue-別邸・スイート-」建設に向け不動産クラウドファンディング等も実施予定。また、他沿線でも地域活性化に向けさまざまな施策を展開予定。
認知症で不安になる本人・家族・企業が少なくなる社会へ。電話×AIによる「脳の健康チェック」サービス
ダイバーシティ&インクルージョン部門|受賞年:2024年
▷NTTドコモビジネス、日本テクトシステムズ
「認知症で不安になる本人・家族・企業が少なくなる社会へ」をコンセプトに、通話でAIが脳の健康状態を確認するサービスを開発。同技術を活用した法人サービスも開始。
今年度、兵庫県養父市に脳の健康チェックを導入。リンクワーカー活用に向け、チェック結果をシステム連携し、認知症施策支援に活用予定。ほかの自治体とも実証実験や導入に向けた議論を継続中。加えて、生命保険業の新規顧客接点構築や、ビジネスケアラーの社会課題解決に向けた検討など、「認知症で困る本人、家族、企業が少なくなる社会」を目指し、活用の幅を拡大。軽度認知障害への対策も、IT領域からの貢献を検討中。



