集中、仕事に身を捧げる姿勢、過剰なまでのエネルギー
友人と長距離のハイキングに出かけた際に、寒さに震えみじめな気分になったゲイツは、「自分の思考に逃げ込んだ。頭の中にコンピューターコードを思い描いた」と回想している。ハイキングで延々と歩き続けているあいだに、複雑に絡まり合った長いコードを整理して、より簡潔な形に改めることができたという。「あの長い1日に、私は(コードを)さらにスリム化した。太い木の棒を削って、先を鋭くするようなものだ」と同氏は回想している。
「私の“洞穴”(自室のこと)に1人でいる時は、本を読んだり、ただ座って思考に身を委ねたりしていた。ベッドに横たわったまま、頭に問題を思い浮かべれば、際限なく考えをめぐらせることができた」という。
ゲイツはこんなことも書いている。「私は小さいころからずっと、過剰なほどに集中する能力を持っていた(中略)。ある対象について真に集中し、事実や定理、日付や名前や理論などを頭に取り込んでいると、私の頭脳は自動的にそこから得た情報を、きちんと構築された論理的な枠組みの中に分類していくのだった」。
ライバルに先んじるためには、私が知る限りこれが唯一の方法だった
マイクロソフトを立ち上げた時期の状況についても、ゲイツはこう説明している。「潜水艦の防水ハッチのように、私は外界をシャットアウトすることができた」。これはつまり「ガールフレンドもなし、趣味もなし」という状況を意味したが、それについて同氏は、自分なりの意味づけを披露している。「ライバルに先んじるためには、私が知る限りこれが唯一の方法だった。そして私は、他の人にも、同様の仕事に打ち込む姿勢を求めた。私たちの前には、この巨大なチャンスが広がっていた。週に80時間働いてでも、それを追求しない理由があるだろうか?」。
スティーブ・バルマー
「もう1つ、私の若いころの特徴として顕著だったのは『過剰なエネルギー』とでも言うべき特質だ」とゲイツは書いている。その後、マイクロソフトを築き上げる過程で、のちに同社の幹部となるスティーブ・バルマーに会ってみるように友人から勧められた時のことを、ゲイツはこう振り返っている。「このころには、私と同じように過剰なエネルギーを発している(中略)他の人を見ると、即座に認識できるようになっていた。スティーブ・バルマーは、私がそれまでに知り合った人たち以上に、そうした特質を持ち合わせていた」。
ハーバード大での学び
ゲイツは進学したハーバード大学で、難易度が高くカリキュラムが濃密なことで知られる難関数学講座「Math55」を受講した際の、完璧とは言い難かった自らの出来映えについても回想している。「受講生は誰もが、大学適性試験(SAT)の数学科目で(満点の)800点をマークしていた」という。「この時点まで私は、私にとって重要な、なんらかの知的活動において、『この人の方が明らかに自分より優秀だ』と感じる状況を経験したことは数えるほどしかなかった。そうした状況で私は、優秀な人から学べることを精一杯吸収していた」。
さらにゲイツは、ここで得た気づきについて綴っている。「この時は違っていた。自分が非常に優秀な数学的頭脳を持ってはいるものの、最高クラスの数学者の際立った特徴である、洞察力という天賦の才は持ち合わせていないことを認めるようになったのだ。私には才能はあったが、学問の根本をなすような発見ができる能力はなかった」。
また、アレンとの、互いに補い合うことが可能だった仕事のスタイルについては、こう書いている。「私のアプローチは矢継ぎ早で、直接的だった。処理速度の高さに誇りを抱いていた。正しい答え、最高の答えを、即座に繰り出せると思っていたのだ。せっかちなリアルタイムの思考様式だ。しかも、私はいくらでも働くことができた。何日もぶっ通しで、立ち止まることはめったになかった」。


