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2025.10.09 14:15

伝説の数学問題xAI。ChatGPTの「自習」に科学者震撼、プロンプト設計にも革新か

Getty Images

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2000年以上前、プラトンはソクラテスが生徒に課した「Doubling the square(正方形<の面積>を倍にする)」という古典的な問題について記録している。

元の正方形の面積を2倍にするよう求められた生徒は、辺の長さを単純に2倍にしてしまい、対角線を用いる必要があるという真の解法に気づかなかった。

この古代のパズルは長らく、学習や推論、数学的洞察が生得的な理解から来るのか、それとも経験から来るのかを探る問いとして用いられてきた。今日では、研究者たちは同じ問題を人工知能に向けている。

AIは推論を通じて自習する?

ケンブリッジ大学とエルサレムのヘブライ大学の研究チームは、ChatGPTの数学的推論を試すため、この問題を提示した。彼らがこれを選んだ理由は明快である。解法は自明ではなく、モデルの訓練データ(主にテキストであり図式ではない)に直接含まれている可能性が低いからだ。もしChatGPTが補助なしで解けるなら、それはAIが単に記憶を検索するのではなく、推論を通じて「学習」できる可能性を示唆することになる。

当初、ChatGPTは長方形に同様の論理を適用するよう求められるとつまずいた。面積を2倍にする幾何学的解法は存在しないと誤って主張し、対角線は役に立たないと断言したのである。客員研究員ナダヴ・マルコは、この正確な誤りが訓練データに現れている可能性は「ほとんどゼロに近い」と指摘した。彼にとってこの応答は、AIが即興的にふるまい、会話の前半部分に基づいて仮説を検証しているかのように見えるものだった。

「私たちが新しい問題に直面したとき、過去の経験に基づいて試行してみようとするのが本能である」とマルコは説明した。「我々の実験において、ChatGPTも似たことをしているように見えた。学習者や研究者のように、自ら仮説や解決策を考え出しているかのようだった」

この解釈はケンブリッジ大学のアンドレアス・スティリアニデス教授にも支持された。両者はAIの推論が教育学で知られる「最近接発達領域(ZPD)」に似ていると示唆した。これは、すでに知っていることと適切な指導によって学び得ることの間にある領域である。この意味で、ChatGPTはソクラテスの生徒が誤りを犯したのと同様に、失敗をしながらも新しい課題に取り組む「学習者的」な振る舞いを示したのである。

AIが「考える」とは

この研究は9月17日に『International Journal of Mathematical Education in Science and Technology』に掲載されたが、AIが「考える」とはどういうことかについて広い問題を提起している。大規模言語モデルは本質的にブラックボックスであり、結論に至る過程は依然として不透明である。それでも研究者たちは、この実験が一つの可能性を示していると強調した。すなわち、AIが即興的に対応する様子を理解することで、教育者はAIを単なる答えを返す道具ではなく、探究のパートナーとして活用できるという点である。

スティリアニデスは盲目的な信頼に警鐘を鳴らし、「信頼できる教科書にある証明とは異なり、学生はChatGPTの証明が正しいと当然のように仮定してはならない」と警告した。その代わりに、教育はAIが生成した推論を評価する力を含むべきだと主張した。また、より良いプロンプト設計も必要になるかもしれない━━AIに答えを命じるのではなく、「一緒に問題を探究しよう」と求めるべきだというのである。

研究チームは自らの成果を過大評価することは控えているが、今後の研究には豊かな可能性があると見ている。より新しいAIモデルを幅広い数学問題で試したり、動的幾何学システムと組み合わせたりすることで、教育におけるより協働的なデジタル環境を作り出せるかもしれない。



(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」から転載したものです)

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