Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は10月号(8月25日発売)より、「フェッラーリペルレビアンコ リゼルヴァ 2016」。果実味あふれる余韻を感じさせ、長期熟成に由来する丸みのあるハーモニーを楽しめる1本だ。
某酒場にて、「シャンパーニュ地方でつくられてなければシャンパンじゃないんだ」という酔客の一言がふと耳に入った。ふむ、その通り。発泡しているワインはすべてシャンパーニュだと誤解されがちだが、厳密な原産地呼称制度が存在していることは、現在では広く認知されるようになった。
イタリアで生産される発泡性ワインはスプマンテと称され、そのなかで北部のトレンティーノ・アルト・アディジェで生産されるものはトレントDOCと格付けされている。シャンパーニュと同じく瓶内二次発酵方式を採用し、最低15カ月の瓶内熟成を課されたワインは“山のスパークリング”としてミネラル感とシャープな酸が特徴。イタリアのなかでもシャンパーニュに匹敵する高品質のスパークリングワイン産地として知られている。
「特に『フェッラーリ』は同産地のほかのつくり手と一線を画する存在です」とは、「ESPRIT C. KEI GINZA」(東京・銀座)でシェフソムリエを務める中島一希。大統領官邸をはじめ、国外のイタリア大使館での公式晩餐会で必ず供される「フェッラーリ」はイタリアで最初に瓶内二次発酵製法に取り組んだパイオニアであり、また創業者のジュリオ・フェッラーリはイタリアで初めてシャルドネを大規模に栽培した人物として“スプマンテの父”ともいわれる。
「スプマンテ=手ごろで軽やかという通念を覆し、熟成による複雑味と格調を備えた本格派スパークリングワインとしての存在をイタリアで最初に示しました。トレントという土地のテロワールを、世界レベルのスパークリングワインに昇華させているのが素晴らしいですね」
なかでも単一ヴィンテージでシャルドネを100%使用した「ペルレ・ビアンコ」は果実味あふれる余韻を感じさせ、長期熟成に由来する丸みのあるハーモニーを楽しめる一本。この日はウロコをカリカリに焼き上げた金目鯛の一皿を合わせ、酒と料理の双方でクリスピーな食感を楽しむという、なんとも夏らしく爽快なペアリングを提案してくれた。添えられたバジル主体のピストゥーソース、レモンのジャムなどを加えることで、すぐには気づかなかったワインの多彩なパレットが次々に開花する様も面白い。味のハーモニーを楽しむ口内調味は日本伝統の食文化のひとつとされているが、ワインの奥深い魅力を堪能するにも有効な手段のひとつであるに違いない。
フェッラーリ ペルレ ビアンコ リゼルヴァ 2016

容量|750ml
セパージュ|シャルドネ100%
価格|8500円(希望小売価格)
問い合わせ|日欧商事 Tel. 0120-200105



