ソーシャルメディアは、真の議論や健全な討論が行われ、正当な懸念について意見を交わす場となったときに最も輝きを放つ。XやFacebookのようなプラットフォームでの議論は時に炎上合戦に陥ることもあるが、筆者のInstagramでの経験ははるかに有益なものだった。AI女優ティリー・ノーウッド(Tilly Norwood)をめぐる最近の議論は、礼儀正しいだけでなく思慮深く、懸念を表明できた人々にとっては刺激的ですらあった。
発端はエリーネ・ファン・デル・フェルデンによるInstagramの投稿で、ティリー・ノーウッドというAIボットは人間の代替品ではないと説明したことだった。動画制作会社Particle6を経営するコメディアンで俳優の彼女は、この投稿でティリーは絵筆や道具に近い存在だと述べ、AIによる演技をCG、人形劇、アニメーションになぞらえた。
ファン・デル・フェルデンはコメディアンでもあるため、その投稿が皮肉を意図していたのか100%明確ではないが、冗談として書かれたようには読めない。(筆者はファン・デル・フェルデンに連絡を取ったが、まだ返答はない。返答があればお知らせする)。
AIはティリー・ノーウッドを本物のように見せる
ティリー・ノーウッドはAI女優として非常に説得力がある。以下のデモリールには、Huluのテレビシリーズの一部のように見える場面がいくつも含まれている(映像が完全にAI生成である旨の明確な事前告知が冒頭になされている)。
デモ動画の別のクリップでは、英国で人気のGraham Norton Showへの「出演」中に、ノーウッドが合図どおりにウソ泣きをしている。違和感の手がかりはおおむね存在する(AI生成の映像はやや完璧すぎ、少し白っぽく抜けた印象がある)が、AIによる演技がいよいよ避けがたいものになりつつあることが分かる。
少なくともこれまでのところ、そのInstagram投稿への反応は、控えめに言ってもきわめて興味深い。
あるユーザーは、そのAI俳優を「she」と呼ぶべきではないと不満を述べた。これは人間にのみ使う語だからだという。別のユーザーは、演技の仕事で誰もCGやアニメと競わせられるべきではないと発言した。
Instagramでの優れた反論のひとつでは、ノーウッドの背後にいる企業は、このAIのモデルとなったすべての人物の名前を公表し、将来の仕事で得られるロイヤルティの一定割合をその俳優たちに支払うべきだと主張していた。



