卒業後はリョービに入社し、半年でアメリカ子会社の園芸用機器メーカーに赴任する。ダイカスト事業を主力とするリョービに、なぜ園芸領域の会社があるのか。説明はこうだ。
「私が入社した1989年当時はバブル経済のど真ん中。日本企業による海外企業の買収が盛んに行われており、わが社も流れに乗って積極的にM&Aをしていました」
園芸だけではない。ミドル世代なら、リョービと聞いて釣り具や電動工具、ゴルフクラブを思い浮かべる人も多いだろう。当時は多角化でさまざまな事業を展開していた。
しかし、現在はその多くから撤退している。なかでも浦上が悔やむのは、米国などの電動工具事業の譲渡だ。
「勢いに乗って買収したはいいものの、わが社に買収先をハンドリングするリソースがなくて手放さざるをえなかった。兵站が整っていないと戦い続けられないと痛感しました」
そうした失敗を後継者として間近に見てきただけに、トップになった今、念入りな準備を重視するのだ。
とはいえ、リスクを取らないわけではない。
現在、テスラや中国メーカーはEV車体にギガキャスト(ダイカストによる大型構造部品の一体成形)を採用している。ギガキャストは従来のやり方より工程を大幅に短縮できる利点があるが、自動車の構造部品に求められる機能を満たせるかどうかは未知数。業界のスタンダードになるかは不透明だが、リョービは今年3月、約50億円を投じて専業ダイカストメーカーとしては日本初となる6500トンのギガキャストマシンを導入した。
時流に沿っているものの、一歩間違えればムダになりかねない新工法に、なぜ巨額の投資をしたのか。
「中国の自動車メーカーが内製で実用化しているのに、ダイカスターであるわが社が『その技術は知らない』とは言えないでしょう。お客様から話があれば、やれる状態にしておく必要があります。もし普及しなかったら? ギガキャストマシンで中型部品を多数取ることもできるのでムダにはなりません。そのあたりはちゃんと考えていますよ」
大胆に投資しつつ、リスクヘッジも抜かりなく。浦上のスタイルはどこまでも徹底していた。
うらかみ・あきら◎1965年生まれ、広島県出身。89年に早稲田大学教育学部を卒業後、リョービへ入社。米国子会社、人事部他、事業部門を経て2003年に執行役員、05年取締役を経て、11年に代表取締役社長に就任。現在に至る。


