一方の中国経済も、デフレが続き、個人消費は停滞し、不動産危機が長引いており、健全と考える人はまずいない。それでも、30%の関税と世界的な不確実性の「強気相場」という逆境にありながら、習の経済はなんとか持ちこたえている。
前出の張は中国経済について「今年これまで輸出活動は驚異的な粘り腰をみせており、国内需要の弱さを一部相殺することに寄与している」と述べている。
もちろん不安材料はある。中国の8月の消費者物価指数(CPI)は6カ月ぶりの速さで下落し、デフレが依然として共産党政権にとって大きな課題であることを浮き彫りにした。
張は「上半期のGDP成長率が5%を超えていたので、中国政府としては通年の成長目標である5%の達成を危うくしない限り、下半期の減速を許容する可能性がある」とみている。
これはピーター・ナバロ米大統領上級顧問にとって最悪の展開だ。『Death by China(仮訳:中国がもたらす死)』という本の共著者でもあるナバロは、自身の主導した貿易戦争がブーメランのように上司に跳ね返ってきているのを目の当たりにしている。トランプ2.0が、みずからの関税で打撃を受けた米国農家を救済しようとしていることを見るだけでいい。トランプ1.0でもやったように。
また、「アメリカ・ファースト」を掲げる大統領が、奇妙にもアルゼンチンに200億ドル(約3兆円)の救済の手を差し伸べていることにも注目しよう。「MAGA(米国を再び偉大に)」好きのアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領はその一方で、習が米国から買わなくなっている大豆などの農産物を中国に輸出しようとしている。
貿易戦争が「トランプワールド」の想定していなかったような形でジグザグに進むなかで、中国がわりとうまく持ちこたえていることは、どんな辛辣なツイートにも増してホワイトハウスに対する強烈な皮肉になっている。

