AI

2025.10.06 10:30

GPU担保に4.3兆円を借入、AIブームで拡大する「時価総額10兆円」のCoreWeave

コアウィーブのピーター・サランキ、ブライアン・ヴェンチューロ、マイケル・イントレーター、ブラニン・マクビー (Photo by Michael M. Santiago/Getty Images)

コアウィーブのピーター・サランキ、ブライアン・ヴェンチューロ、マイケル・イントレーター、ブラニン・マクビー (Photo by Michael M. Santiago/Getty Images)

人工知能(AI)向け半導体の不足が深刻化する米国で、データセンター事業者CoreWeave(コアウィーブ)が急成長している。共同創業者マイケル・イントレーターは、GPUを担保に総額290億ドル(約4.3兆円、1ドル=147円換算)を借り入れるという異例のデットファイナンスを活用し、同社を拡大させた。その結果、CoreWeaveの時価総額は667億ドル(約9.8兆円)に達し、イントレーター自身の保有株式価値も67億ドル(約9850億円)に膨らみ、米長者番付入りを果たした。

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しかし成長の裏では、借入依存がバランスシートを圧迫しており、すでに112億ドル(約1.6兆円)超の負債を抱える。さらにJPモルガンの試算では、この負債は今後2年で300億ドル(約44.1兆円)に膨張する可能性がある。背景には、AI需要の急拡大に対応するためのGPU調達とデータセンター投資の加速があり、巨額の債務依存はAIバブル懸念と直結する深刻なリスクをはらんでいる。

暗号資産マイニングから始まったCoreWeave

2017年8月のある晴れた日、イントレーターはマンハッタンのオフィスで「本当にビルを燃やしてしまうかもしれない」と思い始めていた。

金融街のビルの6階のオフィスでは、部屋中のコンセントにつながれた数十基の強力なエヌビディア製GPUが、仮想通貨のマイニングに必要な複雑な計算処理を行っていた。だがそこから発生する熱は膨大で、週末のため空調が止められた室内の温度は摂氏54度近くの蒸し風呂と化していた。「頭がおかしくなりそうだった。この部屋は本来こんな用途には作られていないんだ。もうダメだ、出ていくしかないと思った」とイントレーターは振り返る。

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GPUを積んだトラックでニュージャージーへ避難

彼と共同創業者のブライアン・ヴェントゥーロとブラニン・マクビーは、触るのも危険なほど熱を帯びたサーバーを慌てて切り離し、ピックアップトラックに積み込んだ。そして、熱気を逃がす設備や巨大な排気フアンを備えたガレージがあるニュージャージーへと急いだ。

25万基ものGPUを擁するAIデータセンター大手に成長

それから約8年が経った現在も、イントレーターはGPUを動かし続けている。ただし、その規模は桁違いだ。CoreWeaveはいまでは25万基ものGPUを、全米33カ所のデータセンターに収容し、計算能力を求める顧客に貸し出している。かつてはゲームのグラフィックス処理や仮想通貨のマイニング向けの需要が高かったエヌビディアのGPUは、いまではAIに欠かせないエンジンとなっている。

時価総額が667億ドル(約9.8兆円)のナスダック上場企業となったCoreWeaveは、マイクロソフト、OpenAI、メタなどの大手が頼る主要な「GPUブローカー」の地位を築いている。

GPUを担保にした、総額4.3兆円の借り入れ

同社が直面する新たな火種は、資金面だ。イントレーターが考案したGPUを担保にした新たな資金調達スキームによって、CoreWeaveは総額290億ドル(約4.3兆円)を借り入れることができた。だがその裏で同社は、借金依存を懸念する株主やAIブームを警戒する声に直面している。それでも彼は、ハイテク大手のみならず、AIを導入するあらゆる企業に計算資源を提供するという大きな野望を掲げ続けている。

2031年までに4.4兆円の収益目標

それは無謀な目標ではない。ニュージャージー州リビングストンに本社を置くCoreWeaveは、10年足らずでデータセンター帝国を築き上げており、2024年の売上高は19億ドル(約2800億円)、2025年上半期の売上高も22億ドル(約3230億円)に達した。ただし、同社は2024年に8億6000万ドル(約1265億円)の純損失を計上し、利益率はマイナス45%だった。また、今年上半期の純損失は6億500万ドル(約890億円)で利益率はマイナス28%だった。それでもCoreWeaveは、2031年までに、IBMやメタといった大手、Cohere、Mistralなど一連のAIスタートアップとの契約を中心に、300億ドル(約4.4兆円)の追加の収益を目指している。

同社の株価は、今年3月の新規株式公開(IPO)以降に2倍以上に上昇し、同期間のナスダック全体の23.9%のリターンを大きく上回った。そして、その過程でCoreWeaveは少なくとも5人のビリオネアを生み出している。イントレーター(56)の資産は67億ドル(約9850億円)となり、初めて米国長者番付「フォーブス400」にランクインした。共同創業者のヴェントゥーロ(40)も42億ドル(約6170億円)の資産を築き、同じくリスト入りした。共同創業者のマクビーとピーター・サランキ、そして初期投資家のジャック・コーゲンも同社のおかげでビリオネアとなった。

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翻訳=上田裕資

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