AI

2025.10.06 10:30

GPU担保に4.3兆円を借入、AIブームで拡大する「時価総額10兆円」のCoreWeave

コアウィーブのピーター・サランキ、ブライアン・ヴェンチューロ、マイケル・イントレーター、ブラニン・マクビー (Photo by Michael M. Santiago/Getty Images)

世界中で爆発的に高まったGPU需要

CoreWeaveの驚異的な成長を支えてきたのは、世界中で爆発的に高まったGPU需要だ。ChatGPTが2022年に人気を博して以降、スタートアップ各社は高度なGPUの争奪戦に直面し、今年2月にはOpenAIですら主要モデルのアップグレードを、チップ不足のために延期せざるを得なかった。それはつまり、GPUを握る者が巨大なビジネスチャンスを手にすることを意味する。ウォール街のアナリストによれば、AI向けクラウドコンピューティング市場は2024年に2300億ドル(約33.8兆円)規模に達し、ブームが続けば2028年には4000億ドル(約58.8兆円)に拡大すると見込まれている。

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「私は40年の投資経験の中で、これほど供給と需要のバランスが崩れた状況を見たことがない」と語るのは、CoreWeaveに累計2500万ドル(約37億円)を投資したSuRo CapitalのCEO、マーク・クラインだ。

イントレーターは、鋭い直感と旺盛なリスク志向、そして幸運もあって、自身の暗号資産事業が抱えていたGPUの在庫が、トークンのマイニング以上の可能性を秘めていることにいち早く気づいた。そこにエヌビディアとの戦略的関係が加わり、CoreWeaveはAI時代を代表するクラウドプロバイダーの一角に躍り出た。

シリコンバレーの投資家たちは当初、CoreWeaveがアマゾンやマイクロソフト、グーグルといった潤沢な資金力を持つクラウド大手に太刀打ちできるとは信じていなかった。これらの企業は今も同社の最大の競合であると同時に、場合によっては重要な顧客でもある。

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「大多数の投資家は我々を狂っていると思っていた」

「大多数の投資家は我々を狂っていると思っていた」とイントレーターは言う。ベンチャーキャピタル(VC)にそっぽを向かれた彼は、「イーストコースト・マネー」と呼ぶ債券市場に活路を求めた。ブラックストーンやマグネターといった一流の民間の貸し手が、数十億ドル(数千億円)規模のインフラ整備に資金を提供し、CoreWeaveはAIの計算需要の爆発に対応できるようになった。

借入による資金調達は、イントレーターを含む創業者らがより多くの貴重な株式を手元に残すことにもつながった。現在イントレーターは13%、ヴェントゥーロは7%を保有している。「規模こそがすべてだ」とヴェントゥーロは語る。「このビジネスで重要なのは資本集約度だけだ」。

巨額の負債と収益性の課題

ただし、CoreWeaveのバランスシートに計上された112億ドル(約1.6兆円)もの負債は市場を震撼させている。金利が7〜15%に及ぶため、資金コストは高止まりしており、同社は直近の四半期に1900万ドル(約28億円)の営業利益しか上げられない一方で、利払いに2億5000万ドル(約368億円)以上を充てざるを得なかった。CoreWeaveの資産の約半分はGPUが占めているが、耐用年数は6年程度とされ、エヌビディアがチップの更新を加速させるなかでは短くなる可能性もある。D.A.デビッドソンのアナリスト、ギル・ルリアは辛辣だ。「この会社は価値を食いつぶしている」。

依存する大口顧客と新規契約

批判派は、2024年の売上高1900万ドル(約28億円)のうちの62%をマイクロソフトという1社が占めていた点を問題視する。ただしその依存は長く続かない見通しだ。OpenAIが今後5年間でCoreWeaveのインフラに159億ドル(約2.3兆円)を投じると約束し、3億5000万ドル(約515億円)分の株式も取得したからだ。

CoreWeaveは最近ではグーグルとも計算資源の供給契約を結び、IBMも同社のGPUクラスターを利用している。「これにより我々の研究者はインフラではなく、AIそのものに集中できる」とIBMクラウドのCTO、ヒラリー・ハンターは述べている。

AIバブルの懸念と投資リスク

そして、ここには根本的な疑問が残る。AIブームは本当に実体を伴っているのか、それとも単なるバブルなのか。PitchBookによれば、2025年上半期だけで投資家はAIスタートアップに1040億ドル(約15.3兆円)を投じており、AIをインターネットや自動車の登場になぞらえ、産業を根底から変革するとの期待に賭けている。しかし、それはまだ現実にはなっていない。

サム・アルトマンも「痛い目を見る」と警告

生成AIに数十億ドル(数千億円)を投じても、多くの企業はいまだに明確なリターンを得られていない。大半のAI企業はいまだ黒字化に至っていないのだ。AI業界をけん引するサム・アルトマンですら、投資家の熱狂が「痛い目を見る」危険性を警告している。業界有数のGPUプロバイダーとして極めて高いレバレッジに依存するCoreWeaveにとって、これはとりわけ深刻だ。つまりバブルが弾ければ、CoreWeaveの事業も共倒れになる可能性が高い。

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翻訳=上田裕資

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