働き方

2025.10.06 17:00

社畜時代へ逆戻り、「996勤務」過酷な長時間労働が米国で広がる テック業界で顕著

Shutterstock.com

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人工知能(AI)関連のスタートアップの中には、中国で一般的とされる従業員が月曜から土曜までの週6日、午前9時から午後9時まで働く「996勤務」を採用し、職場を暗黒時代へと後戻りさせているところがある。アジアの企業は従業員を酷使することで知られ、慢性的な職業性ストレスが管理されないまま進行し、やがてバーンアウト(燃え尽き症候群)に至る。これが放置されれば、過労死につながることもある。

996勤務が行われている分野

ワークライフバランスやフレックスタイム制を奨励する取り組みにもかかわらず、米国の一部の企業では最近、従業員が週末を削って「996勤務」という過酷な労働をこなしている。専門家は、従業員を週72時間働かせる996勤務は、企業による虐待だと指摘している。

996勤務は中国で一般的なものとしてよく知られているが、米国でも、抜きん出た存在になりたければもっと多くの企業が996勤務を導入すべきだと主張する声がある。しかし専門家は、この過重労働はバーンアウトやストレスにつながり、ワークライフバランスに悪影響を及ぼすと主張している。

それ以上に、長時間労働は危険であることを示す研究結果もある。英国の研究によると、1日11時間以上働く従業員は、心臓発作を起こす確率が67%高まるという。また、週に54時間以上働く従業員は、過労死に至る確率が高まる。

だが、米国の経営トップらはかなりハードに働いている。アップルの最高経営責任者(CEO)のティム・クックは午前4時半にメールを送る。ヤフー元CEOのマリッサ・メイヤーは週130時間働いていたと言われ、テスラCEOのイーロン・マスクは週120時間働くことで知られている。

米フィンテック企業のRamp(ランプ)はこのほど、企業の支出データの分析を発表し、そこでは996勤務がもはや単なる噂話ではないことが示されている。サンフランシスコの企業活動において、996勤務が確認されているのだ。報告書によると、サンフランシスコの従業員は土曜日も働いている。土曜日の正午から真夜中までのレストランのテイクアウトやデリバリーの精算が、その証拠だ。

調査結果によると、この傾向はサンフランシスコで確認されている。ニューヨークなどハイテク企業が集積するその他の都市では、サンフランシスコのおよそ4分の1の規模でみられ、ほとんどが午後8時以降の食事だという。だが週72時間労働はテック業界に限った話ではない。この傾向はAIスタートアップやソフトウェア企業だけでなく、さまざまな業界で急速に広がっていることが示されている。Rampの顧客ベースはハイテク業界に偏っているが、このパターンは996勤務という考え方がサンフランシスコを拠点とする多くの企業に浸透している可能性を示唆している。

Rampのエコノミスト、アラ・カラジアンは、ベイエリアは常に志を同じくする人たちが腕を磨くことができる場所だと話した。この場合の腕とは、競争に打ち勝つことのできる、急成長するスタートアップを立ち上げることだという。

「このトレンドが自分の職場に悪影響を与えるのではないかと心配している人たちの声を、たくさん聞いた」とカラジアンは言う。「そうした人には『落ち着いて』と言いたい。良い仕事をすることに集中しよう。このトレンドはさまざまな業界で見られるが、米国中の労働者が職の確保のためだけに、週60時間労働する必要があるような世界には向かっていない」

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翻訳=溝口慈子

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