2025年を節目に、さらに加速する世界的な潮流「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」。Forbes JAPAN12月号別冊NEXT GX STREAM 日本発「GX経済圏」の衝撃では、GXの最前線で活躍するプレーヤーに光をあて、日本がGXをリードするための道筋をお届けする。
音楽プロデューサー・小林武史とアスエネ創業者・西和田浩平の気候変動勉強会や、GXに本気で取り組む日本企業のGX RANKING、次世代のスタートアップを選出したNEXT GX STARTUPS 50など、GXの現在地がわかるような様々なコンテンツを特集する。
GX領域に日本はどのように取り組めば良いのか。インキュベイトファンド代表パートナーの本間真彦に聞いた。
AI時代の電力需要急増で、日本企業が磨きをかけてきた省エネ技術やノウハウが「競争優位性」に転換する可能性を秘めている。GX新経済圏を射止める視点の切り替えとは。
2050年のカーボンニュートラル実現に向け世界の動きが加速する中、日本のGX(グリーン・トランスフォーメーション)領域でもビジネスの機会が広がっている。再生可能エネルギー、蓄電・蓄熱、CCS(二酸化炭素の回収・貯留)などの技術革新が進んでいるからだ。
従来、サステナブルな社会の実現やESG投資など「社会に対する責務」としてGXに取り組む企業は多かった。しかし、GXをはじめとする幅広い領域のスタートアップに投資してきたインキュベイトファンド代表パートナーの本間真彦は、「GXとは経済安全保障の主要なアジェンダであり、同時に大きな経済圏の創出も兼ねています」と表現する。
発言の背景にあるのは、年間20兆円に及ぶエネルギー輸入市場だ。「この20兆円は、毎年確実に海外に流出している『隠れた経済圏』です。IT貿易赤字の約6兆円、インバウンド収入の約8兆円と比較しても、その規模の大きさは際立っている」と本間は指摘する。
この巨大市場はこれまで「所与の前提」とされてきた。つまり、化石燃料は日本で産出できない以上、輸入に頼るしかないと考えられてきたのだ。しかしGXは、この常識を根本から覆す。風力発電、太陽光発電、水素技術などにより、海外に流出していた20兆円を「国内経済圏」として取り戻す可能性を示している。
ウクライナ紛争は、この転換の必要性を劇的に浮き彫りにした。ロシアからの天然ガス供給停止により、再生可能エネルギーに注力していたドイツが深刻なエネルギー危機に陥った一方、原子力中心のフランスは影響を最小化できた。
「GXが目指すのは、単なる環境配慮ではありません。20兆円規模の新たなビジネス市場の創出です」



