20兆円の「隠れた経済圏」 省エネ技術を武器に勝ち取る、日本のGX戦略

国内で予想される2つの潮流

5年後といった短期的なGX市場の予測について、本間は大きく2つの流れが出てくると予測する。

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第一の潮流は、「製造業プラットフォーム」。前述の通り、大手製造業がサプライチェーン管理で培ったGXノウハウを、業界横断的なプラットフォームサービスとして展開する流れだ。企業が持つ省エネ技術や排出削減システムが、業界標準として他社に採用され、そこから新たなサービスなどが生まれる可能性も高い。

第二の潮流は、地方創生と地域分散型エネルギーにまつわるビジネス。地方自治体や地域インフラ企業が核となり、地熱、風力、太陽光など地域資源を活用したエネルギーの地産地消システムが生み出す経済圏だ。ここにスタートアップがアプリケーション技術を提供し、新たな産業生態系を形成する。

「例えば、我々の投資先にはEVバスの製造会社と、EVバスの車両管理システムをつくっている企業があります。この2つは、地方自治体のスマートシティ化需要を捉えて急成長している。これは単なる車両販売や、車両管理・エネルギーマネジメントだけではなく、地域エネルギー経済圏の一部を担うビジネスモデルです」

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今後は蓄熱・送電、水素運搬、建物一体型ペロブスカイト太陽電池などの実用化により、これらの経済圏の基盤が整備されると見込まれる。

海外を含めたGX経済圏で主導権を握るには、スタートアップと大企業の戦略的連携が不可欠となる。

「新しい経済圏では、従来の企業境界を超えた連携が勝負を決めます。スマートシティのようなシステムを海外展開するには、商社のファイナンス力、通信や鉄道などのインフラ会社の知見や長年積み重ねてきた確かな技術、そしてスタートアップの先進的な技術を組み合わせる必要がある」

連携形態も今後はよりオプションが増えていくと本間は指摘する。従来のM&Aだけではなく、大学発スタートアップ、大企業からのスピンアウト、業界横断的ジョイントベンチャーなど、新たな事業創造モデルが次々と生まれている。

特に本間は、日本の大学や企業の研究に大きな可能性を感じるという。

「社会課題解決の一助になるディープテック・スタートアップへの期待が高まっています。国や大企業がどうサポートやアライアンスを組んでいけるのか。それがこの後の日本のGX市場の拡大にかかわってきます」


ほんま・まさひこ◎インキュベイトファンド代表パートナー。ジャフコの海外投資部門、アクセンチュアなどを経て、ベンチャーキャピタリストとして独立後、2010年にインキュベイトファンドを共同設立。

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text by Kenichi Marumo | illustration by Jia-yi Zoe Liu (FolioArt) | edited by Kaori Saeki

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