AI革命が生み出すエネルギー新経済圏
もう一つ、GX市場を活性化させている要因が生成AIの登場と普及だ。
「数年前まで『エネルギー消費は減少していく』とされていたのが、AIの普及で完全に逆転しました。データセンターやGPU利用による電力需要の爆発的な増加は、新たなエネルギー経済圏を生み出している」
世界のエネルギー消費予測に関して不確実性が高まる中、従来は「制約」とされてきた日本の省エネ志向が、突如として「競争優位」に転換したと本間は指摘する。
「AIの発展においてアメリカや中国は巨大なコンピューティングパワーで勝負できますが、他国はなかなかそこには及ばない。一方で日本の勝ち筋となりうる可能性があるのは、『省電力環境下でのAI活用技術』。AIインフラはまだ確立されていません。そこに日本が育ててきた省エネ技術が生かされ、優位性が発揮できるはずです」
1970年代のオイルショック以来、日本企業が蓄積してきた省エネ技術は存在感を増している。AI消費による電力需要の増大と、そこから生じるCO2への対策となりうる日本の製造業による脱炭素可視化技術やCO2トラッキングシステムが世界最先端レベルにあるからだ。
「内向きの効率化」から「外向きの事業化」へ
GX経済圏が真の成長市場となるには、従来の「内向きの効率化」から「外向きの事業化」への転換が不可欠だ。
これまで日本企業のGXは、自社のCO2排出削減という「社内完結型」の取り組みが中心だった。しかし本間は「その蓄積したノウハウを外部に展開する仕組み」こそが成長の鍵だと強調する。
「日本の製造業は、40年以上にわたって省エネとプロセス管理を極めてきました。このノウハウを国内外の企業に提供できれば、『GXサービス経済圏』という巨大な新市場が生まれます」
参考となるのがアマゾンの戦略だ。Eコマースを手がける一企業の内部システムだったサーバー管理技術を、AWS(アマゾン ウェブ サービス)としてクラウド市場に展開し、今やアマゾンの最大収益源となっている。
「日本企業のGXにおけるノウハウや仕組みも同じ可能性を秘めています。社内で蓄積したエネルギー管理データやサプライチェーンにおけるグリーン調達を、AIを活用して外部サービス化すれば、新たなビジネスとなりうる。『内向け』の取り組みを『外向け』のビジネスに転換する、という視点の切り替えができるかが肝となります。アマゾンの例のように、アメリカがDXで行った手法を、日本はGXで展開できるのではないでしょうか」


