サイエンス

2025.10.05 13:00

古代ローマ人の食生活から学ぶ──人間はどんな食べ物を摂取するようにできているのか

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古代ローマ人が好んだ飲み物

古代ローマ人は階級を問わず、一様にワイン好きで、水やハーブ、はちみつと混ぜて飲むことが多かった。ワインは、水だけを飲むより安全な場合が多く、思っている以上に栄養が豊富だった。赤ワインにはポリフェノールが含まれている。なかでも特に多いのが、抗酸化作用と抗炎症作用をもつレスベラトロールだ。

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とはいえ、古代ローマのワインは、アルコール度数が高くて糖分もたっぷり含まれている現代のワインとはかなり違う。アルコール含有量は低く、食事の一環として飲むだけだったので、摂取量も控えめだった。

生物学者としての観点から見ると、食事のお供としてアルコールを適度にたしなむ古代ローマ人の姿勢は、多くの現代社会を悩ませている大量飲酒の習慣よりも健康的だ。

古代ローマ人の食生活から学ぶべき教訓

古代ローマ人の食生活と現代の食のトレンドを比べると、重要な生物学的洞察がいくつか見えてくる。

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・豊富な食物繊維が、健やかな体をつくる。人間の体を健康にしてくれるのは、豆類や穀物、野菜など、食物繊維を豊富に含む植物性の主食だ。そしてこうした食料が、古代ローマ人の食生活を支えていた

・発酵は、単なる調理法ではなく生物学的な働きをもつ。古代ローマ人は、直観的にガルムの良さを理解し、これを料理に用いていた。今風に言えば「腸に優しい」食品だったのだ

・肉とアルコールは控えめに。これは、長期的な健康に関する進化的・疫学的なエビデンスと一致している

・食料不足の周期性。古代では生活の厳しさだったが、生物学的な効果もあった。現代では、その状態をまねた断続的断食を行うと、類似した効果が得られる

プロテインバーやケトジェニック・ダイエット(糖質制限を中心とした食事療法)、超加工食品が蔓延する世界にとって、生物学、簡素さ、必要性に根差した古代ローマ風の食生活は、実に新鮮なお手本といえる。

健康のために、自宅で魚の内臓を発酵させる必要はない。しかし、最盛期には何千万人にも上る古代ローマ人の腹を満たしていた、持続可能な原則にもとづいた文明からは、我々は数多くのことを学ぶことができる。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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