北米

2025.10.02 14:00

米政府が閉鎖、その背景や影響を詳しく解説

Anna Moneymaker/Getty Images

Anna Moneymaker/Getty Images

トランプ政権は政府閉鎖を利用して民主党が主導する州や優先課題を狙い撃ちし、みずからの重要課題の一部は維持している。米行政管理予算局(OMB)は、数日のうちに解雇が始まる可能性があると警告している。

トランプ政権、政府閉鎖を利用し民主党系州のエネルギー・インフラ資金を停止

OMBのラッセル・ヴォート局長は米国時間10月1日、同局が「左派の気候変動アジェンダを推進するためのものだ」として、バイデン政権時代のエネルギー関連事業資金である80億ドル(約1兆1800億円)を取り消すと発表した。対象は2024年の大統領選でカマラ・ハリスが勝利したコロラド、カリフォルニア、ニュージャージー、ニューヨークなどの州だが、具体的にどの事業が影響を受けるのかは不明である。

さらに、Politicoが匿名の4人の情報筋を引用して報じたところによれば、ヴォートは同日、下院共和党議員との電話会議で、ニューヨークにおける他のインフラ事業も審査対象となっていると述べたという。同州は民主党指導部の拠点であり、政府は閉鎖の影響で数日のうちに恒久的なレイオフを始める可能性がある。

政権はまた、ニューヨーク市の2大インフラ事業、ハドソン・トンネルと2番街地下鉄への資金180億ドル(約2兆6400億円)を停止した。ヴォートは「違憲のDEI(多様性、公平性、包括性)原則に基づいて資金が流れるのを防ぐためだ」と説明し、運輸省は政府閉鎖により資金の審査が長引く可能性があると警告した。

その一方で、トランプ政権は政府閉鎖中も一部の優先課題を維持している。政権関係者がABCニュースに語ったところによれば、ホワイトハウスの舞踏場建設は議会歳出ではないため継続される。またPoliticoが入手した内部文書によると、関税や移民取締りを担当する部署は、以前の政府閉鎖時よりも多くの職員を残す予定である。

JD・ヴァンス副大統領による反論

副大統領のJ・D・ヴァンスは1日の会見で、「我々は政治的な思惑に基づいて連邦機関を狙い撃ちしているわけではない」と述べ、民主党を意図的に狙っているとの見方を否定した。しかし下院議長のマイク・ジョンソン(共和党・ルイジアナ州)は同日、「長引けば長引くほど苦しみは増す」と会見で述べ、ラジオ司会者ムーン・グリフォンに対し、政府閉鎖は共和党にとって「利益」となり、連邦職員削減をさらに進められると語った。

なぜ政府は閉鎖されたのか?

上院は9月30日、政府を現行予算で11月21日まで運営することを可能にする共和党支持の「つなぎ予算(continuing resolution)」を承認できなかった。この法案は55対45で否決され、可決に必要な60票に届かなかった。民主党議員3人が共和党に同調して賛成したが、数週間のうちに2度目の否決となった。下院では共和党同案が217対212で可決済みだが、上院を通すには少なくとも民主党7人の支持が必要である。さらに上院は1日にも55対45で同案を否決し、民主党のつなぎ予算案も53対47で否決した。

最大の争点は、年末で失効予定のオバマケア関連の連邦税額控除を民主党が延長しようとしている点である。共和党は民主党が閉鎖を強行し、不法移民に公的医療保険を提供しようとしていると非難している(法的には認められていない)。

閉鎖はどのくらい続くのか?

1日午後時点で、交渉が進展している兆しもあった。超党派の上院議員らが別の代替案を協議し、民主党に医療関連で譲歩する可能性を探っていたとPoliticoは報じた。2日はヨム・キプル(ユダヤ教の祭日)のため上院は休会で、次の採決は3日になると見込まれている。ヴァンスは「それほど長引かない」と予測したが、責任は民主党にあると主張し、不法移民への医療提供を望んでいるとの主張を繰り返した。

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翻訳=江津拓哉

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