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2025.10.04 08:00

フェイスブックが彼を資産1500億円のビリオネアにした──ジム・ブライヤーの投資哲学

ベンチャーキャピタリストのジム・ブライヤー(Photo by Matt Winkelmeyer/FilmMagic)

次なる投資の軸は「AIとヘルスケア」、その融合にかける未来

息子たちを巻き込んで次の章を歩み始めたことは、ブライヤーにとって新たな活力となり、視線をさらなる未来へと向けさせている。テキサスに移住し、息子たちをパートナーに迎えてから1年後、彼は投資の新たな軸を定めた。人工知能(AI)とライフサイエンス、ヘルスケアを結びつける道を探り始めたのだ。

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「私たちは今、AIやその関連技術が、どのように、そしてどれほど深い成果を生み出し得るのかを見極めているところだ」と彼は説明する。

今年4月、ブライヤー・キャピタルに新たなパートナーが加わった。ダニエルの大学時代からの親友で、有望な若手ベンチャーキャピタリストのモーガン・チータムだ。ダニエルと彼は、ブラウン大学の起業学の授業でブライヤーがゲストスピーカーとして登壇した際に知り合ったという。

フォーブスの「30 Under 30」2023年版にも選ばれたチータムは、ブラウン大学で学部を修了してから医学の道に進む一方で、過去8年間ベンチャーキャピタルのベッセマー・パートナーズで投資家として活動してきた。彼は、現在も遺伝学を専門とするレジデンシーとフェローシップを組み合わせた研修を続ける一方で、ブライヤー・キャピタルで新たな投資案件を積極的に探している。

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医師の4割が使うAIサービス「OpenEvidence」

彼らが、AIとヘルスケアを結びつける投資の中で、これまでに最も成功を収めた案件の1つが「OpenEvidence」だ。同社は、医師が最新の医学研究を参照できる、ChatGPTのような無料アプリを開発している。ブライヤーが、同社の共同創業者兼CEOのダニエル・ナドラーを支援するのはこれが初めてではない。彼が立ち上げた最初のスタートアップの金融分析会社ケンショーは、2018年にS&Pグローバルに5億5000万ドル(約809億円)で買収されたが、ブライヤーは同社に出資していた。

現在、米国の医師の40%が登録するOpenEvidenceの無料アプリは、月間850万件の診療相談で利用されている。同社は7月、評価額35億ドル(約5145億円)で2億1000万ドル(約309億円)を調達し、42歳のナドラーはビリオネアの仲間入りを果たした。

ブライヤーを高く評価するナドラーは、こう語る。「彼は、私がこれまで接してきたどの投資家ともまるで違っている。私は最高の投資家たちと仕事をしてきたが、そのなかでも彼は際立っている。彼は創業者そのものに強い関心を持っていて、なぜその人物が異端的で突出した存在なのかを知りたがるんだ。大きな成功を収めた人々の多くは、どこか風変わりなところがある。彼はそこを掘り下げたいと思っている」

ナドラーはまた、ブライヤーやセコイア・キャピタルの投資家たちが、彼に投げかけた質問についても語った。「なぜ君は負けん気が強いのか? 何が君を突き動かしているのか? なぜそんなに競争心が強いのか? そして、ある程度の経済的な安心を得た後も、どうして競争を続けていけるのか?」

ブライヤーからの投資を受けたナドラーはその後、一文程度か時には三語だけの短いメールを何十通もブライヤーに送るようになったという。するとブライヤーは、すぐに返事をくれた。「彼は、いつも余計な形式にとらわれず、核心を突いた答えをくれるんだ。まるで友人と話しているような感覚だ」とナドラーは言う。

それこそが、投資家としてのブライヤーの“個人的な魔力”なのかもしれない。それは、起業家の心を和ませ、単にディールをまとめるだけでなく、その後の難題を切り抜けるための手助けをする力なのだ。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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