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2025.10.04 08:00

フェイスブックが彼を資産1500億円のビリオネアにした──ジム・ブライヤーの投資哲学

ベンチャーキャピタリストのジム・ブライヤー(Photo by Matt Winkelmeyer/FilmMagic)

100倍超のリターンを生んだ4つの投資──初期のフェイスブックも

2011年から2013年にかけてフォーブスのベンチャー投資家ランキング「ミダス・リスト」で首位を飾ったブライヤーは、これまで数多くの投資を成功させてきた。そのなかでもサークルは、100倍以上のリターンをもたらした4つの投資先のうちの1つだ。残りの3つは、彼とシリコンバレーのベンチャーキャピタル、アクセル・パートナーズが1株4セントで出資したフェイスブック(現在の株価は743ドル[約11万円])や、1990年代後半にネットワーク機器を手がけ、1999年のドットコム・バブル前に上場し、その後買収されたファウンドリー・ネットワークスとレッドバック・ネットワークスの2社への賭けだった。

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さらに彼によれば、配当を含め20倍以上のリターンを上げた投資は15件にのぼる。その一例が2011年に評価額9億ドル(約1323億円)で投資した音楽配信大手スポティファイだ。同社の時価総額は現在、1490億ドルに(約21.9兆円)達しており、ブライヤーは現在も同社株を保有している。

もう1つの成功例が、幼なじみのワイク・グラウスベックとともに行ったNBAチーム、ボストン・セルティックスへの数百万ドル(数億円)規模の投資だ。2002年、グラウスベックが率いた3億6000万ドル(約529億円)での同チームの買収に加わったブライヤーは今年、シリコンバレーの投資家ビル・チゾルムが率いるグループがチームの51%を61億ドル(約8967億円)の評価額で取得したタイミングで、自身の持ち分を売却した。

成功の鍵は人柄、創業者の資質を見抜く独自の投資哲学

ブライヤーは、投資先の製品のみならず、創業者の人柄を重視することで知られており、その対象は小学校時代の友人から、パーカー姿の大学中退者、元イスラエル兵、写真家志望の若者まで広がっている。そして、その姿勢は、さらに別の投資の成功を呼び込んだ。2009年にディズニーが40億ドル(約5880億円)で買収したマーベルや2015年に上場したEtsy(エッツィ)、2016年に中国の大連万達集団が35億ドル(約5145億円)で買収したレジェンダリー・ピクチャーズなどだ。

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その過程でブライヤーは、ウォルマートやデル、ニューズ・コーポレーションの取締役やハーバード大学の理事を務め、現在はブラックストーンの取締役を務めている。「私は彼のオープンさを見てきた」とブラックストーン社長のジョン・グレイは語る。「それは彼特有の、極めて貴重な資質だと思う」

ブライヤーのインスタグラムの投稿からは、そのオープンさと幅広い関心が見えてくる。フレンチオープンのテニス大会や、元レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジとのひととき、ロサンゼルスで開かれたフランシス・フォード・コッポラを称えるアメリカ映画協会(AFI、ブライヤーは長年の理事)の式典に出席した際の模様などだ。彼はまた、その直後にガゴシアン・ギャラリーで始まったピカソ展を訪れていた。

ブライヤーは、8月には洪水被害の救済を目的としたカントリー音楽のチャリティイベント「Band Together Texas」で、俳優マシュー・マコノヒーが司会を務める姿を撮影した。さらに全米各地で行われるテキサス大学ロングホーンズのフットボールの試合でも数々の写真を投稿している。5年前にシリコンバレーからオースティンに移ったブライヤーは今やすっかりテキサスに馴染んでいる。所有するカウボーイブーツは20足を超え、応援するチームの試合には9割方足を運んでいる。

「子どもたちは『父さん、あなたは色んなことに関心を持ちすぎだ』と言うんだが、彼らの言う通りだよ」と彼は笑う。

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翻訳=上田裕資

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