北米

2025.10.02 13:00

米アマゾン、低価格PB食品の新ブランド立ち上げ 「5ドル以下」でインフレ疲れの消費者囲い込みへ

アマゾンは2017年にホールフーズ・マーケットを買収したが、食品市場で苦戦が続いている(Editorial credit: syc011 / Shutterstock.com)

アマゾンは2017年にホールフーズ・マーケットを買収したが、食品市場で苦戦が続いている(Editorial credit: syc011 / Shutterstock.com)

米アマゾンは10月1日、生活に必須な食品を5ドル(約740円)以下で提供する新たな自社ブランド「Amazon Grocery(アマゾン・グロサリー)」を立ち上げたと発表した。節約志向の消費者を取り込み、利益率の低さが課題の食品事業で足場固めを狙う。

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新ブランドは、「Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)」と「Happy Belly(ハッピー・ベリー)」のブランドラインを統合したもの。生鮮食品や肉類から菓子、買い置き食品まで、4つ星以上の評価を得た商品1000点以上を揃え、大半を5ドル以下で販売する。

新商品には焼きたてシナモンロール、冷蔵ピザ生地、レモネード、ボトル入り飲料水などがあり、肉加工品、豆缶詰、冷凍野菜の品揃えも近く拡充予定だ。

アマゾンのプライベートブランド(PB)売上高は2024年に前年比15%の伸びをみせた。8月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比2.9%上昇し、インフレ圧力が高まる中、食品小売業界では相対的に価格の安いPB商品の需要が高まっている。

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「(米国の)消費者は『出費は嵩んでいるのに、得られるものは減っている』と感じている」と、コンサルティング大手の米デロイトで米国消費財産業の担当責任者を務めるマイク・デイアーは指摘する。

「2022年6月のインフレピーク時から現在までをみると、『適正な価格を支払っている』『価格に見合った商品を手に入れている』と感じる消費者はそれぞれ平均61%と30%減少し、回復の兆しは見られない。特に食料品に目を向けると、日常的に消費する食品の価格と品質に関して満足していると答えた消費者は、2025年5月時点でわずか32%だった。これが消費者行動をバリュー(価値)志向に向かわせている」

アマゾンは、2017年に米高級スーパーチェーンのホールフーズ・マーケットを137億ドル(約2兆170億円)で買収して以来、食品市場で苦戦が続いている。一方、小売大手のウォルマートとコストコは売上高、店舗数、消費者支出の規模で市場優位を保っている。

最新の取り組みであるアマゾン・グロサリーは、ウォルマートの「Great Value(グレートバリュー )」やコストコの「Kirkland Signature(カークランドシグネチャー)」に対抗して、インフレにより消費者のバリュー志向が強まる中で急成長する食品PBに注力する動きだ。

北中南米のPB製造・販売・流通関係者でつくる業界団体PLMA(Private Label Manufacturers Association)によれば、PB商品の売上高は2024年に過去最高の2710億ドル(約39兆9200億円)に達し、前年比90億ドル(約1兆3300億円)増、2020年比では510億ドル(約7兆5130億円、23.6%)以上の増加となった。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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