社会で影響力のある地位に誰が就くかは重要だ。彼らの嗜好や個人的資質が、私たち全員に関わる政策課題に影響し得るからだ。これは、C・ライト・ミルズの『The Power Elite』(邦訳:パワー・エリート)のように、影響力を持つ人々をめぐる研究の長い歴史によって記録されてきた。しかし、私たちが「エリート」と呼ぶ人々のうち、最終的に誰が社会で影響力のある地位に就くのか。
ブルックスの主張──エリート教育がアメリカ分断を拡大
デイビッド・ブルックスは、The Atlanticの最近のカバーストーリー『How the Ivy League Broke America』(未訳:アイビー・リーグはいかにアメリカを壊したか)で、メリトクラシー(能力主義)がうまく機能していないと論じる。ブルックスは特に、エリート教育制度に大きな説明責任があると主張し、同制度が政党間や「赤いアメリカ」(共和党支持者)と「青いアメリカ」(民主党支持者)の分断に大きく寄与してきたとする。ブルックスが言う米国のエリート教育とは、アイビー・リーグの頂点であるハーバード大学だけでなく、あらゆる大学ランキングの上位を占めるより広い大学群を指す。ブルックスの主張は多くの点で、チャールズ・マレーの著書『Coming Apart』(未訳:階級分断の拡大)の分析をなぞっている。
学歴による分断の帰結──民主党は高学歴層、共和党は反エリート層に傾斜
ブルックスは、「社会の最も重要な分断が所得水準である場合、政治は金の再分配をめぐる争いになり、社会が学歴によってより分断されている場合、政治は価値観と文化をめぐる戦争になる」という。
実際、マット・グロスマンとデイビッド・ホプキンスは近著『Polarized by Degrees』(未訳:学歴による分断)で、過去数十年にわたり「民主党は進歩的な社会観を持ち、資格ある専門家に政策決定を委ねることを好む高学歴の市民の受け皿となった。その一方、共和党は大学学位を持たない白人有権者のポピュリズムの擁護者となり、教師、科学者、ジャーナリスト、大学、非営利組織、さらには企業に対する不信を強めている」と説明する。これは連邦議会議員の間でも当てはまり、クレイグ・ヴォルデンとアラン・ワイズマンによる論文は、1973年以降現在に至るまで、下院と上院の双方でエリート教育を受けた共和党議員が急速に減少していることを示している。
メディア業界でも学歴偏重、NYTとWSJ編集者の半数がエリート校出身
ブルックスはまた、自身がジャーナリストとして駆け出しだった頃は、どの学校に通ったか(あるいは大学に行ったかどうか)でさえ重要ではなかったが、状況は年月とともに著しく変わったと主張する。ブルックスはその根拠として、カヤ・ペリナと筆者が実施し、Journal of Expertiseに掲載した研究を挙げている。この研究は、ニューヨーク・タイムズとウォール・ストリート・ジャーナルの編集者・記者のおよそ半数が34校のエリート大学群の出身であり(うち20%はアイビー・リーグ出身)、出身校の重みが増していることを示している。
社会の要職にある人々の54%がエリート校卒──一般人口比の28〜80倍
筆者はスティーブン・アンダーソン、カヤ・ペリナ、フランク・C・ウォレル、クリストファー・チャブリスとともに、Nature Humanities & Social Sciences Communicationsに掲載された最近の論文で、影響力のある30のグループに属する合計2万6000人超の米国人を調査した。対象は、四つ星(米軍最高位)の提督・将軍、歴代大統領・副大統領、ピューリッツァー賞受賞者、評価額10億ドル(約1470億円)のスタートアップ企業創業者、National Academy of Sciences会員、ハーバード大学教員などである。同じ34校のエリート大学群を基準にすると、全体の54.2%がこれらの学校のいずれかに在籍していた。その割合は、将軍・提督・下院議員では11.2%〜25.9%である一方、Forbes誌の取り上げた影響力のある人物、ハーバード大学教員、アメリカ哲学協会会員では78.9%〜80.9%に達していた。全体として、36.3%がアイビー・リーグのいずれかの学校に、16%がハーバード大学に在籍していた。
また、米国の成人人口全体では、およそ32.5%が学士号以上を取得しており、今回の研究で対象とした34校のエリート大学のいずれかの学位保持者は1.9%、アイビー・リーグ出身は0.6%、ハーバード出身は0.2%であると算出した。論文で説明したように、「これらのデータは、アメリカの指導層・影響力のある人々の各グループにおける該当者の割合が、母集団の基準率に比べて非常に高いことを示している。たとえば、サンプル2万6198人のうち54%が『エリート』34校のいずれかに通っており、基準率がおよそ1.9%であるとすると、過剰代表の倍率は約28倍と推定される(54/1.9の計算)。全グループ横断で約36%がアイビー・リーグに通っており、これは約60倍(36/0.6)を示唆する。全グループ横断で約16%がハーバード大学に通っており、これは約80倍(16/0.2)を示唆する。ハーバード大学教員を除外しても、この過剰代表の倍率は75倍である(15/0.2)」。
ハーバード単独でも過剰代表率75〜80倍の突出度
調査した30のすべての領域において、ハーバード単体の影響力は驚異的である。特筆すべきは、ハーバード大学教員の44.5%がハーバード大学で学んでおり、ハーバード大学教員のおよそ80%が34校のエリート大学群のいずれかの出身であった点である。



