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2025.10.31 16:00

地中を可視化し未来を守る、日本発の「GENSAI TECH」ーージオ・サーチとみずほ銀行がともに挑む減災

地中はどうなっているのか──。

防災・減災の観点から見れば、目視できない地下構造は大きなリスクを孕んでいる。その課題に挑み、先進技術で“地下を診る眼”を生み出したのがジオ・サーチだ。

「人の命と暮らしを守る」を社是に掲げる同社が展開する「GENSAI TECH®︎」とは何か。メインバンクとして伴走してきたみずほ銀行の使命感とともに、その真価に迫る。


2025年1月、埼玉県八潮市で道路が突如陥没する事故が発生した。周辺120万人の住民に多大な影響を与えるとともに、道路の下に潜む空洞の危険性についての注目が高まった。

このような見えないところに潜む地下のリスクを、独自の3次元可視化技術で発見し、減災につなげているのがジオ・サーチだ。

 “走るCTスキャン”で地中を診断、16万件超の事故を防止

代表取締役社長の雑賀正嗣(以下、雑賀)は同社が持つ技術についてこう説明する。

「2008年に地中や構造物内部を3Dで迅速かつ正確に“見える化”する『スケルカ®』技術の世界初実用化に成功しました。この技術によって、持続可能なインフラを支えることができると思っています」(雑賀)

雑賀正嗣 ジオ・サーチ 代表取締役社長 
雑賀正嗣 ジオ・サーチ 代表取締役社長 

「スケルカ®」は、道路や橋梁内部の空洞・劣化を非破壊で調査し、陥没などの事故を未然に防止する技術だ。

同技術を活用した専用探査車両「スケルカー®」では、最高時速100kmで走行しながら高精度データを収集可能にした、いわば「走るCTスキャン」だ。マイクロ波レーダーで得た情報を解析し、地下状況を可視化する。従来の10分の1の時間、半分のコストで調査から報告までを実行できるという。

スケルカー。マイクロ波レーダーで得た情報を解析し、地下状況を可視化する。従来の10分の1の時間、半分のコストで調査から報告までを実行できるという。
スケルカー®。マイクロ波レーダーで得た情報を解析し、地下状況を可視化する。従来の10分の1の時間、半分のコストで調査から報告までを実行できるという。

この技術の活用場面のひとつが、災害や陥没事故発生後の緊急空洞調査だ。

「地震や豪雨災害などが発生すると地中も大きなダメージを受け、多くの空洞が発生します。放置すると陥没に至り災害からの復旧・復興の妨げとなることから迅速な対応が必要です。このことは、陥没事故の発生時も同様です。当社は、『スケルカー®』を全国に配置し、12時間以内で出動できる体制を整えています」

同社では、11年3月の東日本大震災や24年1月の能登半島地震などの際には二次災害の防止に向けて、16年博多駅前陥没事故や25年埼玉・八潮市道路陥没事故の際には安全確認のために迅速な対応をしてきた。

雑賀はさらに強調する。

「平時からの対応こそが鍵です。点検診断を日常的に行うことで、大田区では7割、藤沢市では8割の道路陥没事故を減らせました。これにより、災害時の道路ネットワーク確保も強化されます」

ジオ・サーチはこれまでに延べ313,984km(地球約8周分)を調査し、164,891件の道路陥没を未然に防いできた。ただ、災害やインフラ老朽化による課題は道路陥没予防だけではない。上下水道、電気、ガス、通信など、地下のライフラインは、今、耐震化や更新が急がれている。雑賀はそれが進まない理由をこう語る。

「問題は、信頼できる地下インフラの位置情報がないことです。実際に工事で掘ってみなければ分からない現状では、迅速な更新や耐震化は不可能です」

その解決策として同社が展開するサービスが、「地上・地下インフラ3Dマップ」だ。非破壊技術でライフラインを可視化し、三次元デジタルマップ化すれば、正確な地下情報を基に最適な計画・設計・工事が可能になる。

「地上・地下インフラ3Dマップ」の例。画像提供:豊島区
「地上・地下インフラ3Dマップ」の例。画像提供:豊島区

「スケルカ®」技術は常に最先端技術を求めている米空軍からも“世界でも類を見ないゲームチェンジャー”と高く評価され。台湾での事業化は国交省「JAPANコンストラクション国際賞(先駆的事業活動部門)」を受賞した。

 「宇宙と同様に、地中もまた残された大きなフロンティア。日本発の地中可視化技術『GENSAI TECH®』で世界各地の課題解決に貢献していきます」

何よりも「人の命と暮らしを守る」ための減災技術

こうしたアイデンティティの背景にあるのが、ジオ・サーチの「貢献心」だ。

1989年に同社を創業した冨田洋(現代表取締役会長/以下、冨田)は、「貢献心は人間の本能である」という信念を掲げ、社員に「社会の役に立つことをしよう」と説いてきた。

冨田は油田・ガス田設備開発会社の社員として米国駐在中、地中の空洞や埋設物を可視化できるマイクロ波技術と出会い、帰国後ジオ・サーチを創業。公共構造物の調査診断サービスとして事業を開始した。翌90年には世界初の「路面下空洞探査システム」を開発・実用化し、道路陥没の未然防止に貢献。92年には国連の要請を受け、ボランティアで地雷探知技術の開発にも取り組んだ。

貢献心から始めた92年以来の地雷探知技術の開発が、ジオ・サーチの本業にもポジティブな効果をもたらす。地雷探知技術を進化させることで生まれたのが、「スケルカ®」技術だったのだ。

「社員の全員が『貢献心は本能だ』『役に立つことをしよう』という言葉を肝に銘じて社業に励んでいます。災害や事故を未然に防ぎ、“人の命と暮らしを守る”ことこそ、私たちジオ・サーチの使命です」

その精神は国境をも越えて発揮されている。2018年、台湾東部を中心に大規模な地震が発生した際、同社は現地に飛びボランティア調査を実施した。本事案は日本がこれまで台湾から度々受けてきた支援への感謝を“技術”で返す形となったと言えるだろう。二次災害の防止を目的としたこの活動は、ジオ・サーチの「貢献心」を象徴する取り組みだ。

社会貢献への思いに伴走:みずほ銀行の幅広いサポート

その貢献心に寄り添い、支えてきたのがメインバンクのみずほ銀行である。雑賀は振り返る。

「一時期、やむを得ない事情から仕事が激変したことがありました。その一番苦しい時期にも、みずほ銀行さんは変わらずに支えてくださった。また、東日本大震災以降、全国でインフラの点検需要が急速に増え、拠点数や探査車両を増強する大規模な先行投資が必要になった際も助けていただきました」

ジオ・サーチの本社・技術開発センター・東京事務所が所在する大田区西蒲田を担当する、みずほ銀行大森法人部 部長・橋本達男は語る。

「ジオ・サーチ様は被災地での活動実績が豊富です。全国即応体制を築くには先行投資が不可欠。みずほ銀行は、同社の先進性と将来性を理解し、その根底にある『貢献心』に寄り添ってきました」

橋本達男 みずほ銀行大森法人部 部長
橋本達男 みずほ銀行大森法人部 部長

さらに採用・人材育成面でも支援を強化している。同法人部の部長代理・佐々木航平はこう話す。

「ジオ・サーチ様の強みは、AIを活用した画像解析と同社の空洞診断士の高度な知見を融合した独自の解析力です。ジオ・サーチは、数年単位で時間がかかる空洞診断士の育成や教育制度の整備、多数の診断士を機動的に運用する体制づくりなど、人を大切にする人的資本経営によって、他社にはない大きなアドバンテージを築いてこられました。みずほ銀行は、その価値を深く理解し、人材の採用から成長までの支援においても一層強力に伴走していきます」

佐々木航平 みずほ銀行大森法人部 部長代理
佐々木航平 みずほ銀行大森法人部 部長代理

雑賀も感謝を語る。

「事業を拡大していくにあたって、新たな人材を迎え入れながら適確なマネジメントを継続していくのは大変なことです。そのあたりのコンサルティングも受けながら、見事な距離感で伴走していただいています。本当にありがたいですね」

ともに「GENSAI TECH®︎」を世界の各地に広めていく

これから先、ジオ・サーチとみずほ銀行はどのような未来を描いていくのか。雑賀に聞いた。

「世界で最も信頼される地下情報のプロバイダーを目指し、国内はもとより、世界を相手にしていきたいです。ジオ・サーチは2019年に台湾支店を開設し、22年には米国カリフォルニア州に現地法人を設立しています。今後、日本から『GENSAI TECH®︎』を世界に広めていくためには、より大きな投資が必要となります。現地においてさまざまな企業や団体と手を取り合っていくためのマッチングも必須となります。みずほ銀行さんには、資金面でのノウハウの提供に加えて、我々だけではリーチが難しいパートナーのご紹介など、強力にサポートしていただける機会があるのではないかと期待しています」

橋本も力強く応える。

「今後、資金面でのサポートはもちろん、オープンイノベーションの可能性を拡げるためのパートナー企業との出会いも国内外を問わず提供していきたいですね。さらには、人材育成や組織づくりの面も含めて、あらゆるソリューションで未来を支えていきたいと思います」

ジオ・サーチ

みずほ銀行


さいか・まさつぐ◎京都大学大学院工学研究科修了後の1989年、建設会社に入社。土木設計技術者としてロンドン地下鉄延伸プロジェクトなどを担当。その後、建設コンサルタント会社で道路メンテナンスに関する経験を積み、2002年にジオ・サーチに入社。05年に取締役企画開発部長、21年に代表取締役社長に就任。

はしもと・たつお◎みずほ銀行 大森法人部 部長。東京・大阪を中心に、中小企業から大企業まで幅広い法人営業や、証券での債券営業等に従事。営業店支援部署や船場法人第二部長を経て、2023年より現職。大森法人部では、大田区との密接な連携による取引先支援や、DX・SXを通じた取引先の課題解決に取り組む。

ささき・こうへい◎みずほ銀行 大森法人部 部長代理。東京を中心に個人のお客さまに対する承継や資産運用のコンサルティングを担当した後、スタートアップ企業から中堅・中小企業をメインに幅広いお客さまを担当。2025年より現職。現在は大森法人部において貸出・預金・決済業務のみにとどまらず、本部部署や外部企業と連携しながら、お客さま支援に取り組んでいる。

Promoted by みずほ銀行 / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro