コラボレーションを向上させる共有ビジョン
共有ビジョンという考え方は、革新的な製品やサービスを現実世界で活用する方法にも適用できる。開発段階で生まれた共有ビジョンは、最終的には、現実世界のシナリオにおける、さまざまなグループ間のコラボレーションを促進するようなイノベーションにつながる。
共有ビジョンが、複数の関係者にとって有意義な結果に変わった見事な一例を紹介しよう。「The Gadget Flow(ガジェット・フロー)」で紹介されている、ヘルス&フィットネス・トラッカーの「Tricorder.Zero(トライコーダー・ゼロ)」のケースだ。
オトスコープ(耳内視鏡)、パルスオキシメーター、心電計、筋緊張センサーなどのセンサー機能を内蔵するこのデバイスは、対面での医療機関への不要な訪問を減らしつつ、医療従事者とリアルタイムデータを共有できるように設計されている。患者は、データにもとづいたアドバイスを得ることができ、異常な測定値が生じた場合にはデバイスがアラートを出すため、ユーザーは医師の診察を受けるべき時がわかる。
この例では、イノベーションの鍵を握る重要ポイントは、「ユーザーの健康を最善の状態にする」というテーマが、デバイスのメーカー、患者、医療従事者のコラボレーションを促進していることにある。
同様の成果は、「Monday(マンデイ)」「Asana(アサナ)」「Trello(トレロ)」といったプロジェクト管理・コラボレーションツールでも見られる。コラボレーションを向上させたいという思いから生まれたこのような革新的ソリューションは、いまや世界中の組織で活用され、さらなるイノベーションを巻き起こしている。
ポッドキャスト「Killer Innovations(キラー・イノベーション)」のホスト、フィル・マッキニーはこう説明している。「イノベーションとは、孤独な天才になることではない。あらゆるメンバーが安心してアイデアを出しあい、リスクをとり、心配せずに失敗できる場所をつくることだ。ミスをしても罰を受けないとわかっている時の方が、チームメンバーは、はるかに遠くまで、楽々と未踏の領域を探索できる。真のブレークスルーは、そうやって生まれる」


