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2025.10.01 15:00

なぜ今年は金がビットコインを上回っているのか

Sven Hoppe/picture alliance via Getty Images

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今のところ金が優勢だが、ビットコインの過去の実績や季節的傾向を考えると、勝負はまだ終わっていない。そして両者は異なる舞台で走っているのかもしれない。

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ビットコイン支持者が金の古風な魅力を恋しがることはほとんどない。なぜだろうか。この5年間で、ビットコインは黄色く輝く金属の上昇率の約9倍で、ビットコインはおよそ1000%の上昇を見せたのに対し、金は2倍にとどまったからだ。

金は年初来45%上昇、ビットコインは20%にとどまる

しかし今年に限っては、金が主役を奪っている。金価格は1月から45%上昇しているのに対し、ビットコインはわずか20%の上昇にとどまっている。この大きな差により、ビットコイン支持者は突如として金属への羨望を抱き、“デジタルゴールド”の輝きが失われたのではないかと疑問を抱いている。

今年、インフレ、財政赤字、そして世界的混乱に不安を募らせる中央銀行や年金基金が金へと資金を注ぎ込んだことで、金はビットコインを上回っている。ただし、ビットコインが崩れているわけではない。問題はむしろ、ビットコインが取引の場では金というよりテック株のように振る舞ってしまうために、比較が不利になっていることだ。とはいえ、ビットコインには例年もっとも強い時期がこれから訪れるため、今年の金の優位は急速に消えるかもしれない。

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ビットコインと金のペアリングは単なる市場の噂ではない。両者は希少で、中央銀行による紙幣増刷から免れ、法定通貨(政府が発行する貨幣)の終焉を信じる人々を強く惹きつける。投資家がこの比較を好むのは、それが完璧だからではなく、デジタルマネーを古代から存在する実体に結び付ける心の拠り所となるからだ。

その魅力の重なりは、初期のビットコイン伝道者であるトレース・メイヤーのような存在を引き寄せた。彼は金信奉者からビットコイナーへ転じ、デジタルな希少性を新たなフロンティアと見なした。ビットコインの謎めいた創始者であるサトシ・ナカモトですら、金の伝説に言及した。彼は自身のオンライン上の誕生日を、1933年にフランクリン・ルーズベルト大統領が市民による金保有を禁じた大統領令6102号と、1975年にジェラルド・フォード大統領がその命令を撤廃したことに結び付けたのだ。

こうした人々にとって、金はビットコインの自然なベンチマークである。しかし、その哲学的な親近性に惑わされてはならない。市場はきれいな比喩には関心がない。ビットコインはテスラの株価チャートを追うかのように取引され、金は金融の防火布として身を低く構える。

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翻訳=江津拓哉

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