欧州

2025.10.01 09:30

ロシア政府がポップカルチャーを利用、戦況から大衆の注意をそらすためか

ロシア・モスクワ交通博物館主催のビンテージ自動車展示会。2025年7月13日撮影(Tian Bing/China News Service/VCG via Getty Images)

ロシア・モスクワ交通博物館主催のビンテージ自動車展示会。2025年7月13日撮影(Tian Bing/China News Service/VCG via Getty Images)

「要塞ロシア」の外壁がついに崩れ始めたようだ。戦争による一時的な好景気は経済の法則に従い、前例のない行き詰まりが拡大している。ロシアが選択したウクライナへの侵攻は、開始から3年半以上が経過した今もなお、実質的には何の見返りもないまま、1日当たり約10億ドル(約1500億円)という莫大な代償を強いている。

ドミトリー・ロゴジン元副首相は最近、ウクライナとの戦争が膠着(こうちゃく)状態にあり、ロシアはごくわずかな領土しか獲得しておらず、「莫大な犠牲」を払っていると認めた。愛国主義者として知られる同元副首相がこのような発言をするのは極めて異例だ。

もちろん、こうした事実はロシアの公式プロパガンダには一切反映されていない。政府は依然としてウクライナ侵攻が順調に進んでおり、ロシアにはこの戦争をほぼ無期限に継続する手段があると主張し続けている。しかしよく言われるように、事実は変えがたいものだ。そのため、経済問題が深刻化する中、ロシアのウラジーミル・プーチン政権は、自らが招いた財政的・政治的破綻の実態から国民の目をそらすための取り組みを強化している。首都モスクワでは、期間限定の花壇やライトショー、噴水やテーマパークなど、祝祭の雰囲気があふれていることからも明らかだ。ストリートフェスティバルはこうした祝祭の最も一般的な形態であり、この夏だけでモスクワでは1万件以上のイベントが開催された。

恐らく最も注目されたのは、8月5日~9月7日までモスクワのスコルコボで開催された電子音楽フェスティバル「ポルタル2030-2050」だろう。同フェスティバルには13カ国から110組のDJが出演し、10万6000人を超える観客が来場した。出演者には、フランスのウィリー・ウィリアム、スペインのサック・ノエル、ルーマニアのエドワード・マヤといったDJや、ジョン・デーブのようなマルチメディア・アーティストなど、クラブ通いの若者なら誰もが知っている名前が並んだ。そして、ロシアの地政学的情勢の変化に合わせるかのように、このフェスティバルは明らかにアジア色が強かった。出演者は世界各地から集まり、さまざまなアジア美術の展示会が開かれ、有名な韓国の振付師が司会を務めるK-POPのダンスコンテストまで開催された。

言い換えれば、このイベントは「サブカルチャーによるソフトパワー」の縮図であり、エレクトロニックダンスミュージック(EDM)、K-POP、デジタルアートコミュニティーのフェスティバルツアーにおける世界的な拠点として、モスクワを強調することが目的だった。来場者の多くは若年層で、政治に関心が薄い一方で移動性が高い。戦略は、無料のショーでニッチなファン層を獲得し、若者をソフトパワーの軌道に引き込むことだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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